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米Anthropicは2026年10月16日、自社のAIモデル「Claude(Anthropicが開発する高度な推論と安全性を備えた大規模言語モデル)」が、現代のインターネット通信で広く普及している暗号規格「ECDSA(楕円曲線デジタル署名アルゴリズム。データの送信者検証と改ざん防止を担保する公開鍵暗号技術)」における長年の未解明パラメーターの起源を解明したと発表した。1990年代末に策定された標準仕様のシード値が、当時の疑似乱数生成器とタイムスタンプから作られていたことを約30分で特定した。
ECDSAは、送信者の本人確認や改ざん検知に用いられる暗号技術であり、楕円曲線の形状を決める数値が安全性の根幹を握る。米国国立標準技術研究所(NIST)が2000年に採用した標準曲線では、米国家安全保障局(NSA)から提供された「シード値」の生成過程が公開されておらず、暗号解読用の「バックドア(意図的な抜け穴)」が組み込まれているのではないかという疑念が約25年にわたり暗号研究者の間で議論されてきた。
Anthropicの研究チームが社内の研究用モデルに分析を依頼したところ、Claudeはシード値を32ビット単位で区切った際に先頭ビットがすべて0になる偏りを発見した。この特徴から、1990年代のC言語標準ライブラリで多用されていた疑似乱数生成器「lrand48」が使われたこと、初期値に1997年から1998年のUnixタイムスタンプが用いられたことを逆算で突き止めた。例えば「P-256」曲線のシード値は、1997年8月16日1時52分34秒(協定世界時)を開始点として再現可能であることが確認された。
本研究成果は暗号の脆弱性を示すものではなく、むしろ作為的な弱点が仕込まれていた可能性が極めて低いことを裏付けるものとなった。
| 検証項目 | 解明された事実 | 残る未確認事項・課題 |
|---|---|---|
| シード値の出所 | 当時標準的だった「lrand48」とUnixタイムスタンプの組み合わせ | 候補の中で特定の数値が選定・採用された詳細な選定基準 |
| バックドア疑惑 | 意図的な弱点(作為的なシード値)が仕込まれた可能性は大幅に低下 | 一部の楕円曲線における「基点」パラメーターの生成手順 |
| コミュニティへの還元 | 賞金受領権をLet's Encrypt運営のISRGへ寄付(3万6864ドル) | 過去のレガシー暗号パラメーター全体の再検証への波及効果 |
発表では、シード値の生成手法は特定されたものの、生成された複数の候補値からなぜ現在の数値が最終採用されたのかという意思決定プロセスや、一部の基点の導出式は未解明のままであると整理されている。
LLMが単なるテキスト生成にとどまらず、バイト列の統計的偏りから過去のアルゴリズムや実装仕様を推測するリバースエンジニアリング・暗号解析の補助ツールとして実用的な推論力を備えていることを示した象徴的事例である。歴史的経緯が不透明なまま運用されてきたレガシーインフラの仕様監査において、AIを活用したパラメーター再構築が有効な手段となることを示唆している。
引用元:GIGAZINE