AI関連の最新ニュースをピックアップ
Microsoftは、AIエージェント構築基盤「Microsoft Copilot Studio」において、エンタープライズ向けマネージド知識層「Foundry IQ」連携の一般提供(GA)を開始した。企業内のファイアウォール内や閉域網に分散する業務データを、グラウンディング(AIの回答生成を事実や指定データに基づいて裏付ける仕組み)の根拠としてエージェントへ安全に接続できるようになる。本GAリリースでは、パブリックインターネットに一切データを露出させない完全閉域接続機能が正式に提供される。
公式ブログによると、Foundry IQは社内データのアクセス権限、情報検索(RAG(検索拡張生成。外部データから関連情報を検索してLLMに渡す手法))、ランキング処理を単一のレイヤーで統制する知識基盤である。作成者はデータソースごとに個別のアクセス設定を行う必要がなくなり、統一されたガバナンス下でエージェントを構築できる。
一般提供に伴い実装された主要機能は以下の通りである。
プライベート接続の導入により、従来のパブリックエンドポイント利用時と比べてネットワーク境界防御が大幅に強化される。
| 項目 | 従来のプレビュー接続方式 | GA後のPrivate Link構成 |
|---|---|---|
| 通信経路 | パブリックインターネット経由 | Azure Private Linkによる閉域網内通信 |
| IP露出 | パブリックIPアドレスが必要 | プライベートDNS(privatelink.search.windows.net)で内部IP解決 |
| ネットワーク分離 | IPホワイトリスト等での制限 | パブリックアクセス完全遮断(Deny All) |
| トラフィック経路 | Power Platform共有ゲートウェイ | 委託サブネットへのインジェクション経由 |
構築手順としては、まずAzure AI Search側でFoundry IQサブリソースのプライベートエンドポイントを作成してパブリック接続を遮断し、続いてPower Platform管理センターで委託サブネットのエンタープライズポリシーを割り当てた上で、Copilot Studioのツール接続画面からナレッジベースを追加する流れとなる。
金融機関、医療機関、官公庁など、データガバナンス要件が厳格な日本のエンタープライズ企業では、生成AIエージェントの社内展開において「Azure上のナレッジベースがパブリック空間を経由しないこと」が必須要件とされるケースが多い。今回のGAにより、Azure Private LinkとPower Platform VNetの組み合わせが公式サポートされたことで、セキュリティ審査のハードルが一気に解消される。
留意点として、委託サブネットのプロビジョニングやプライベートDNSのルーティング設定において、Azureインフラ担当とPower Platform管理者の連携が不可欠となる点が挙げられる。また、ナレッジベースの権限設定がEntra IDのアクセス制御ポリシーに依存するため、事前のID設計とアクティビティトレースを用いた回答グラウンディングの動作検証が推奨される。
Copilot Studioは当初、市民開発者向けのノーコードボット作成ツールとして普及したが、Foundry IQとの統合深化および閉域網対応によって、本格的なエンタープライズRAG開発基盤へと役割を急速にシフトさせている。基幹業務システムや機密文書を抱える大規模企業において、セキュリティ懸念を払拭しながら自律型AIエージェントを現場へ展開できる環境が整ったことで、競合するエンタープライズAIプラットフォームに対するMicrosoftのエコシステム優位性がさらに強固になったといえる。