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アメリカの著作家らの権利を擁護する全米作家協会(Authors Guild)が米OpenAIおよび米Microsoftを相手取り起こしている著作権侵害集団訴訟において、2026年9月17日付で裁判所に提出された未公開の準備書面(裁判文書)が開示された。開示された文書により、OpenAIの幹部や研究者らがAIモデルのトレーニングに違法な海賊版書籍データベースを利用していることや、それが人間の作家の雇用や生活を脅かす危険性を事前に明確に認識していた実態が明らかになった。

提出文書には、OpenAIの主要関係者による当時の発言記録が複数引用されている。
当時OpenAIの政策ディレクターを務めていたジャック・クラーク氏(現Anthropic共同創業者)は2020年5月、「私たちの取り組みは人々の労働に取って代わるシステムを生み出すことにつながる。GPTの開発が進めば進むほど、ジャンル小説の作家たちはAmazon上でOpenAIが自らの代わりになることを懸念するようになるだろう」と指摘していた。さらに「多くのアーティストが懸念を表明するだろうが、OpenAIはおそらくその懸念を無視してとりあえずリリースしてしまうだろう」と述べていたとされる。
また、2022年から同社で文章生成能力の向上を主導した研究員タルン・ゴギネニ氏は、作家ジョージ・R・R・マーティン氏の小説『氷と炎の歌』の未完結巻をGPTに自動補完させる構想を語っていた。ゴギネニ氏はデータ無断利用に対する作家側の不満を認識しつつも「許容できる経済的混乱」と位置づけ、AI生成コンテンツが再学習されることで「読者の死」が起こるとも予想していた。
さらに文書では、Microsoftへの開示経緯や学習データの隠蔽工作についても言及されている。
2019年4月、サム・アルトマンCEOやダリオ・アモデイ氏(当時研究ディレクター、現Anthropic共同創業者)らがMicrosoftにGPT-3(OpenAIが2020年に発表した1750億パラメータの大規模言語モデル)の初期版を提示した際、世界最大級の海賊版ライブラリ「LibGen(Library Genesisの略称で学術論文や書籍を無断配信する違法オンライン書庫)」を学習データセットとして利用していたことを開示していた。
当時、サム・マキャンディッシュ氏(現Anthropic共同創業者)らは「怪しいロシアのウェブサイトから保護されたデータを使用していると報じられること」など世間の評判を懸念していた。その後OpenAIは2022年夏に「Project Clear」と名付けられたデータ削除を実施した。研究担当副社長のボブ・マックグロウ氏らが社内チャットツール上で「世間の注目を集めている現状を考慮し、システムやストレージからLibGenを削除すべきだ」と判断した記録が残されている。
生成AIの学習データをめぐる著作権紛争は、業界全体で深刻化の一途をたどっている。
| 企業・係争 | 主な論点と学習元データ | 直近の動向 |
|---|---|---|
| OpenAI / Microsoft(本件) | 海賊版サイト「LibGen」からの書籍無断利用、内部認識とデータ削除(Project Clear) | 全米作家協会による内部証言文書の開示 |
| Anthropic | 書籍裁断による大量スキャン・デジタル化学習 | 2026年に作家側と和解(一部著者は拒否) |
| NVIDIA | 海賊版サイト「Anna's Archive」との協力疑惑 | 「連絡のみでは侵害不成立」として訴訟棄却を要求中 |
日本においては著作権法第30条の4に基づき、情報解析を目的とした著作物の利用は原則として許容されると解釈されている。しかし、同条ただし書の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」の解釈や、違法に複製された海賊版データを意図的に学習させた場合の違法性については議論が続いている。本訴訟で争われている「違法海賊版であることを認識した上での商業利用」や「事後的な証拠隠滅」の有無は、米国でのフェアユース(公正利用)判断だけでなく、日本を含む各国の著作権政策やガイドライン策定に大きな影響を与える可能性がある。
なお、今回開示された準備書面は原告である全米作家協会の主張に基づくものであり、OpenAIおよびMicrosoft側の反論や裁判所による確定判断はまだ下されていない。
創業初期に「性能向上」を最優先して適法性や作家への影響を軽視していた実態が法廷で明るみに出たことは、AI企業にとって極めて大きな打撃となる。
編集部注: これまでAI企業は「ネット上に公開された情報の学習はフェアユースである」と主張してきたが、違法海賊版サイトの利用や意図的なデータ破棄の証跡が提示された場合、フェアユースの抗弁が認められなくなるリスクがある。今後は学習データの入手経路やライセンス契約の透明性を証明する厳格なデータガバナンスが、AI企業にとって不可欠な存続要件になるとみられる。
引用元:GIGAZINE