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米Meta(メタ)は、データセンター向けに独自開発したAI推論チップ「Iris(アイリス)」(コードネーム)の製造を2026年9月から開始する計画であることが明らかになった。これは同社の総計算能力を2027年までに14ギガワットまで倍増させる戦略の一環である。このチップは「MTIA(Meta Training and Inference Accelerators)」プログラムの下でBroadcom(ブロードコム)と共同開発され、台湾TSMCの先端プロセスを用いて委託製造が行われる。
Metaによる独自チップ推進の直接的な狙いは、AIインフラの運用にかかる膨大なコスト削減と、半導体市場を支配するエヌビディア(NVIDIA)への依存を弱めることにある。同社の内部メモによると、最新のGPU(画像処理半導体)をMetaの数十億人規模のサービススケールに導入し、最適化する作業は「極めて負荷が高い(heavy lift)」ものであり、多くの時間と開発リソースを消費していた。自社製チップの導入により、調達コストとサプライヤーのリスクを大きく低減させる計画である。
トレーニング(モデルの学習)が高価かつ劇的で注目を集めやすいのに対し、インフラの恒常的な経費となるのはインファレンス(推論)である。メタは「MTIA 450」や「MTIA 500」といった世代を通じて推論能力を強化する方針を示しており、特に「高帯域幅メモリ(HBM)」の帯域幅を前世代から倍増、あるいはさらに50%向上させている。モデルがメモリに収まらないことで処理速度が低下する「VRAM Wall(VRAMの壁)」を、データセンター規模のカスタムシリコンで解決しようとしている。
単にチップを製造するだけでなく、Metaは「KernelEvolve」などのエンジニアリング手法を用い、ソフトウェア(AIフレームワークやカスタムカーネル)を自社のハードウェアに完全に合致させる取り組みを行っている。NVIDIA、AMD、そして独自MTIAという混在したアクセラレータ群に対し、共通のソフトウェアレイヤーを通じて最適なワークロード配置を行うことで、インフラ全体の投資対効果(TCO)を最大化する。
Metaの「Iris」製造開始は、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)にとって「計算資源の完全コントロール」が死活的に重要になっている市場動向を改めて浮き彫りにした。これにより、自社のAIアシスタント機能や広告推薦アルゴリズムをより安価に提供できるようになり、ひいては競争力のある価格設定や新機能の迅速な展開が可能になる。NVIDIAの覇権が今すぐに揺らぐわけではないものの、大手各社が独自の半導体エコシステムを着々と構築している事実は、中長期的なAIハードウェア市場の多極化を加速させる強力なシグナルと言える。