AI関連の最新ニュースをピックアップ
中国の大手IT企業アリババ(Alibaba)が開発するオープンソースの人工知能(AI)モデル「Qwen(通義千問)」シリーズの累計ダウンロード数が10億回を突破し、米メタ(Meta)の「Llama」を抜いて世界で最も多くダウンロードされたオープンソースAIモデルファミリーとなったことが明らかになりました。Hugging Face(ハギングフェイス:機械学習コミュニティおよびプラットフォーム)などのデータによると、Qwenは累計および月間のダウンロード数で世界一を記録しており、オープンソースAIの主導権がシリコンバレーから東アジアへ移行しつつある構造上の変化を示しています。
Qwenが急速に普及した背景には、アーキテクチャ(設計構造)上の明確な強みがあります。初期のLlamaが主に英語に向けて最適化されていたのに対し、Qwenは設計当初から多言語対応を前提に構築されました。また、アリババはコーディング用の「Qwen-Coder」や数学分野に特化した「Qwen-Math」,画像や動画を処理するマルチモーダル(画像や音声など複数の情報を処理する技術)モデルの「Qwen-VL」など、専門の用途に向けて最適化されたモデルを迅速に投入しました。
Qwenは高度なボキャブラリートークナイザー(テキストをAIが処理できる最小単位の「トークン」に分解する装置)を採用しており、英語以外の言語をLlamaよりもはるかに少ないトークン数で処理できます。これにより、グローバル企業が負担する計算コストを大幅に削減することに成功しました。さらに、1.5B(15億)、7B(70億)、14B(140億)、32B(320億)、72B(720億)といったエッジデバイス(末端機器)からデータセンターまで動作するパラメータサイズを幅広く展開し、メタがカバーしきれなかった隙間を埋めました。
アリババは早期から商用利用に対する制限が少ないライセンス体系を採用しました。メタのLlamaで設定されている商用利用ユーザー数の上限などの制限を回避できるため、企業の法務部門が導入しやすい環境を整えました。Hugging Faceとのスムーズな統合も手伝い、個人開発者の標準フレームワークとして定着しています。
Qwenの累計10億ダウンロード突破は、オープンソースAI分野におけるアリババの存在感を決定づけるマイルストーン(重大な節目)となりました。商用利用の制約が少なく、非英語圏での処理効率が極めて高いことから、今後も世界各地の開発現場で採用が進むと見られます。シリコンバレーが主導するAI開発競争において、中国勢が事実上の標準(デファクトスタンダード)の地位を獲得しつつある動きは、業界全体の勢力図に大きな影響を与えることになりそうです。