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引用元:The Eastern Herald | Winbuzzer
半導体大手NVIDIAは、AI向けクラウド事業者と協調し、GPU(AIの学習や計算に用いられる半導体)の初期導入コストを大幅に抑える新しい融資プログラムを開始しました。「売上分配および信用補完モデル」と呼ばれるこの枠組みでは、事業者は莫大な初期投資なしにNVIDIAの高性能インフラ「Grace Blackwell GB300」を導入できます。その代わり、NVIDIAはハードウェアの販売利益に加え、そのGPUが稼働して発生するクラウド売上の一部(ロイヤリティ)を将来にわたり受け取ります。初期パートナーとして、オーストラリアのSharon AIおよびインドネシアのFirmus Technologiesが選ばれ、合計で約21万基におよぶ大規模なGPUの配備が計画されています。
今回導入される「Grace Blackwell GB300」は、1基で15ペタフロップス(1秒間に1.5京回の計算ができる能力の単位)のFP4(データを高効率に処理する計算精度の一種)演算性能と、毎秒8テラバイトの超高速帯域幅を持つ288GBのHBM3e(AI計算向けの極めて高速な一時記憶メモリ)を搭載した最新のスーパーチップです。これらをラック規格で統合した「NVL72」システムは、1システムで1エクサフロップス(ペタフロップスの1000倍の処理能力)を超えるAI計算処理を可能にします。Sharon AIはオーストラリアでのデータセンター拡張に最大40,000基、Firmusはインドネシアのバタム島に建設するキャンパスへ最大170,000基の配備を目指しており、合計21万基規模の超大型案件となります。
このプログラムは、ベンダーファイナンシング(製品の製造元が顧客に対して購入資金を融資・支援する手法)の一種です。通常、新興のGPUクラウド事業者(GPUのレンタルに特化したクラウド事業者)は巨額のハードウェア購入資金の調達に苦しみますが、本プログラムでは将来のクラウド稼働率や売上に連動した支払いが可能になります。また、GPUが稼働せず空きが生じた場合、NVIDIAが所定の価格でその未使用枠を借り戻す「バックストップ(稼働保証)」制度も備わっています。NVIDIA側にとっては、ハードウェア販売時の利益だけでなく、その後の稼働からもロイヤリティを得るという「二段階の収益化(リカーリング収益)」を狙う戦略的な意味合いがあります。
一方で、今回の発表を受けてNVIDIAの株価は時間外取引で約1.4%下落し、Sharon AIの株価は14.2%急落しました(Sharon AIについては資金調達に伴う株式希薄化の影響も含まれます)。市場が懸念しているのは、製造元が資金を融資して自社製品を買わせるモデルが、一見して需要を人工的に作り出している(金融エンジニアリング)ように見える点です。これは1990年代にゼネラル・エレクトリック(GE)の金融部門が行い、後に多額の不良債権を抱えて整理に追われた「GEキャピタル」の機器融資モデルに酷似していると指摘されています。NVIDIAは現時点で、ロイヤリティの分配率や具体的な融資保証条件、プログラムの総枠を公表していません。
本プログラムは、AWS(アマゾンウェブサービス)やGoogleといった自社チップへの移行を進める巨大IT企業(ハイパースケーラー)に対抗し、NVIDIAが新興クラウド勢力を囲い込むための強力な防策です。一方で、AIの計算需要(インファレンス=学習モデルから答えを導き出す推論処理)が想定通りに成長し続ければ両者にとって利益をもたらすものの、急激な需要低迷が起きた場合はNVIDIA自身が未使用インフラの引き取り保証という重いカウンターパーティ(取引相手)リスクを背負うことになります。AIインフラ需要の持続性を図る上でも、本融資枠組みの成否が今後の焦点となりそうです。