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米OpenAIは2026年6月11日、安全なクラウド実行およびオーケストレーション(複数のシステムやプロセスを統合・自動制御する技術)を提供するドイツ発のスタートアップ「Ona(オナ)」(旧Gitpod)を買収することで合意したと発表しました。買収額は非公表です。この買収により、急成長を遂げるOpenAIのAIコーディングツール「Codex」にOnaの強固なクラウドインフラ技術を統合します。これにより、ユーザーがPCを閉じた状態でも、企業の自社クラウド環境内で安全に長時間(数時間から数日)自律的に稼働し続ける「永続的なAIエージェント(long-running agents)」のデプロイが可能になります。

現在、Codexの利用者数は週500万人を超えており、年初から400%の大幅な増加を記録しています。利用者のうち約20%(5分の1)はソフトウェア開発者以外の知識労働者であり、より多様な分野で活用が進んでいます。これに伴い、AIに対する指示の実行時間が従来の「数分」から「数時間から数日」にわたる長期の自律実行(ロングホライズン)へとシフトしてきました。そのため、ローカルマシンから切り離され、バックグラウンドで処理を継続できる安定した実行環境が求められていました。
Onaは以前「Gitpod」ブランドでブラウザベースのクラウド開発環境を提供し、200万人以上の開発者を支援してきた実績があります。2025年9月にOnaへとリブランドし、AIエージェントに特化したセキュアな実行環境へと事業転換しました。同社は、自社のクラウド環境(VPC:他社から隔離された仮想的な専用ネットワーク環境)内にAIエージェントを実行するインフラを配置し、OpenAI側がAIの知能やオーケストレーションを提供する「顧客管理型実行(customer-controlled execution:データを手元で管理しつつAIを動かす仕組み)」を採用しています。これにより、企業はデータや認証情報のセキュリティ境界を完全に制御できるようになります。
企業がAIエージェントを本番運用に導入するにあたり、モデルの能力だけでなく、監査ログの収集、ロールベースのアクセス制御、および資格情報のスコープ設定といったガバナンス機能が極めて重要です。Onaの導入により、金融機関や製薬会社、政府系ファンドなどの規制が厳しい顧客層に対しても、高い信頼基準を満たすインフラの提供が可能になります。OpenAIは今年1月にTorch(医療技術)、3月にPromptfoo(セキュリティテスト)を買収しており、モデルの性能向上だけでなく、企業向けの本番運用インフラを強固にする戦略を推進していると見られます。
今回の買収は、OpenAIが単なるAIモデルの提供元にとどまらず、エンタープライズ市場において自律型エージェントを実行するための「セキュアなプラットフォームプロバイダー」としての地位を確立する狙いがあると考えられます。一方で、OnaはこれまでAnthropicの「Claude Code」やAnysphereの「Cursor」など他社のコーディングツールにも環境を提供していたため、買収後にこれらのマルチモデル対応がどのように変化するか、業界では懸念の声も上がっています。