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米Anthropicは、研究用のClaude(Anthropicが開発する対話型AIモデルファミリー)モデルを活用し、サソリの神経毒に結合する小型タンパク質(ミニバインダー)を計算科学的にゼロから設計(de novo設計(既存配列を改変せず計算機上でゼロから分子構造を設計する手法))する実証実験を実施したと発表した。外部パートナーによるウェットラボ(実験室)検証の結果、AIが設計した211候補のうち17種類が実際の結合基準を満たした。

サソリの刺傷被害は世界で年間120万人以上に達し、主に医療アクセスの限られた地域の小児を中心に3,250人以上の死者を出している。しかし商業的採算性が低いため抗毒素開発の投資が進まず、世界保健機関(WHO)等の枠組みでも顧みられない熱帯病の一つとみなされてきた。
Anthropicのライフサイエンス研究チームは投資調査会社Citrini Researchと協力し、AIが非専門家の主導で実用的な創薬課題を前進させられるかを検証した。Claude Science環境内で動作する研究用モデルに初期プロンプトを与え、その後4回の指示補足を行いながら約64時間にわたり自律的に設計パイプラインを稼働させた。

AIモデルは12種類のタンパク質設計ツールを連動させ、約1万GPU時間を消費して31万8,484件の配列を生成。Protein Data Bank(PDB)やAlphaFoldデータベース(AFDB)から取得した毒素構造をもとに、神経細胞のナトリウムチャネルに結合するホットスポット(重要アミノ酸残基)を特定した。最終的にClaudeが選定した180候補に人間チームが追加した31候補を合わせた計211候補が合成対象となった。
生成された配列は、外部の受託研究機関であるAdaptyv Bio(無細胞細菌発現系)およびTwist Bioscience(哺乳類ヒト腎細胞発現系)の2箇所で独立して合成された。両ラボにおいてSPR法(表面プラズモン共鳴を用いて分子間の結合強度をリアルタイム測定する手法)による結合親和性(解離定数KD)が測定された。
| 標的毒素 | 由来地域 / 種 | 結合確認数 | 最も強い結合親和性 |
|---|---|---|---|
| Cn2 | メキシコ(Centruroides noxius) | 7種類 | 1桁ナノモーラー(Cn2-B1, Cn2-B2) |
| Ts1 | ブラジル | 0種類 | - |
| AaH I | 北アフリカ | 4種類 | 1マイクロモーラー未満 |
| AaH II | 北アフリカ | 4種類 | 1マイクロモーラー未満 |
| LqhIII | 中東 | 2種類 | 1マイクロモーラー未満 |
結合基準(全反復試験でKD 1 µM以下、かつ無関係なヒトタンパク質CLEC12Aへの非特異的結合がないこと)を満たしたのは17種類であった。特にメキシコ産サソリ毒Cn2に対する「Cn2-B1」および「Cn2-B2」は単一桁ナノモーラー水準の極めて強固な結合を示した。競合阻害実験では、マウスでCn2毒素を中和することが既知の抗体「LR」と同一のエピトープ(結合部位)に結合していることが示唆された。
二次報道メディアでは「サソリ毒の薬をAIで作成」といった表現も見られるが、Anthropicの公式発表および技術レポートでは以下の重要な制約が明確に示されている。
Anthropicは他の研究者が成果を発展させられるよう、211件すべての設計配列と測定データおよび技術レポートをHugging Face上で完全公開している。
従来のサソリ抗毒素は、多数のサソリから毒液を抽出し馬に免疫して血清抗体を精製するという数カ月単位の工程を要し、供給不足や高価格が課題となっていた。AIが数日間の計算で毒素結合分子を設計し、数週間のウェットラボ検証で候補を絞り込めることを示した本研究は、商業インセンティブの乏しい希少熱帯病治療における創薬コストと期間を大幅に圧縮する可能性を実証している。

How Claude designed protein binders against scorpion neurotoxins
We asked an internal research Claude model to design minibinders (small proteins that attach tightly to a target) against scorpion neurotoxins.
https://www.anthropic.com/research/claude-scorpion-toxin-binder-design

GIGAZINE
AnthropicがAIで「サソリ毒」に対する薬の作成を前進させたと発表
Claudeにタンパク質を設計させることで、サソリ毒の作用を阻害する可能性のあるものを17種類生成したとAnthropicが発表しました。
https://gigazine.net/news/20261021-claude-designed-protein-against-scorpion-neurotoxins