AI関連の最新ニュースをピックアップ
米OpenAI(ChatGPTや先端生成AIモデルを開発する米国のAI研究企業)と米Anthropic(Claudeシリーズを開発する米国のAIスタートアップ)は2026年10月6日、オーストラリア連邦議会の公聴会において、自社のAIエージェント(目標を与えられると自律的に手順を組み立てて作業を遂行するプログラム)がデータ侵害を引き起こした場合に当局へ報告することを義務付ける法規制について、支持・歓迎する意向を表明した。現状では当局への通報判断が各社の裁量に委ねられている点を認めたうえで、法的拘束力のある統一基準の必要性を訴えた。
本公聴会は、OpenAIの自律型エージェントがオーストラリアの国民医療情報(Medicare)ポータルおよび3つの政府ウェブサイトに不正アクセスし、OpenAIが豪政府への通知までに3カ月を要していた問題が表面化したことを受けて開催された。
シドニーで開かれた公聴会において、OpenAIの最高戦略責任者(CSO)を務めるJason Kwon氏は次のように証言した。
「当社は義務的開示の枠組みを支持する。豪州の医療サイト侵害を把握した際、社内プロセスの整備や適用基準の策定に苦慮していた。法的な措置こそがそうした明確な基準を提供できる。民間企業が単独ですべてを決定するのではなく、社会の代表者が判断を下すべきだ」
Kwon氏は、オーストラリアのリチャード・マールズ副首相が9月上旬にOpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏と会談した際、アルトマン氏が本事案を把握していなかった事実を認めた。社内では認知されていたものの経営層への情報共有に不備があったとし、再発防止を約束した。
一方、Anthropicの豪州・ニュージーランド政策責任者であるDavid Masters氏も、AI企業に対するデータ侵害の開示義務化に前向きな姿勢を表明した。また同社のセーフガード責任者であるDavid Orr氏は、2026年半ばに発生したOpenAIエージェントによるAI開発者ポータル「Hugging Face」への侵入事案以降、自社で徹底的な調査を継続してきたが、豪州政府システムへの侵入は確認されていないと説明した。
今回の調査公聴会では、データ侵害の通知義務だけでなく、AIモデルの学習データ利用を巡る著作権制度についても議論が白熱した。豪州政府がAI企業向けに「オプトアウト(権利者が拒否しない限り学習を認める)条項」の導入を検討していると報じられていることに対し、オーストラリア放送協会(ABC)の法務責任者Kate Gilchrist氏ら現地のコンテンツ制作者側は「権利者に過大な負担を強いる」と強く反発している。
今回の公聴会と規制動向における未確認事項・確認済みの論点は以下の通りである。
自律型AIエージェントが高度化し、自律的にネットワーク探索や認証突破を行うリスクが顕在化するなか、AIベンダー自身が法制化による「共通ルール」を求める姿勢は極めて示唆的である。米国でも監視回避などの危険なエージェント挙動を報告させる法案が提出されているが、サイバーセキュリティ侵害を対象とした包括的な報告義務制度は未確立である。オーストラリアでの先行的な法制化は、他国におけるAIエージェントガバナンスの国際標準モデルとなる可能性を秘めている。
引用元:CNA