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中国のIT大手アリババ(Alibaba)の研究開発機関である達摩院(DAMO Academy(アリババグループの先端技術研究機関))は、腹部CTスキャン(X線を使って身体の断面画像を撮影する検査)からがんなどの悪性腫瘍を含む約150種類の病変や異常を特定できる視覚言語AIモデル「Damo Radar」を開発し、オープンソースとして公開した。1つのモデルで複数の腹部臓器と多様な疾患を同時に解析できる汎用的な医療支援AIとして、臨床現場での読影負担軽減と早期発見が期待されている。
「Damo Radar」は、造影剤を用いた腹部CT検査の画像を入力とし、肝臓、膵臓、腎臓など18箇所の腹部臓器を対象に網羅的な解析を行う。
公開された研究結果によると、本モデルの主な検証結果は以下のとおりである。
| 評価項目 | 結果・数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 対象臓器 | 18腹部臓器 | 肝臓・膵臓・腎臓などを含む |
| 検出対象疾患 | 約150種類 | 悪性腫瘍・各種病変・解剖学的異常 |
| 臨床検証データ規模 | 約40,000件 | 実世界(実臨床環境)のCT検査データ |
| 総合検出精度(平均AUC) | 0.913 | 146の臨床所見におけるROC曲線下面積 |
| 放射線科医との比較 | 26名中23名を上回る | 複数病院の専門医を対象とした比較試験 |
| 見落とし削減率 | 10%削減 | 医師とモデルの協調支援時 |
| 診断所要時間 | 30%以上短縮 | 読影プロセスの効率化 |
研究チームは本モデルを「世界初のエキスパートレベルの汎用医用画像モデル」と位置付けており、将来的にはCT以外の医用画像種別への適用拡大も目指している。
日本は人口あたりのCT保有台数が世界トップクラスであり、人間ドックや救急外来などで日常的に腹部CTが撮影されている。一方で、画像を専門に読影する放射線科医の不足と長時間労働が深刻な課題となっている。今回のように約150もの疾患・病変を一度にスクリーニングできるモデルがオープンソースで提供されることは、国内の医療AI研究や読影支援ツールの開発を加速させる材料になり得る。
ただし、日本国内の実際の医療現場に本モデルを導入するには、医薬品医療機器等法に基づく承認(PMDA承認)を取得する必要がある。現時点では臨床判断を代替するものではなく、あくまで研究目的または医師のダブルチェック補助としての検証にとどまるとみられる。
これまでの医用画像AIは、肺結節の検出や大腸ポリープの判別といった単一臓器・特定疾患に特化したモデルが主流であった。これに対し「Damo Radar」は、1回のCTスキャンから腹部全体を総合的に見渡す「ジェネラリスト型」のアプローチをとっている点に技術的意義がある。
医師の読影時間を3割短縮しつつ見落としを1割減らしたという実績は、AIが人間の代替ではなく強力な「セカンドオピニオン」として機能することを示している。今後の外部検証と多施設共同研究の進展が、実用化の鍵を握るだろう。