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Appleが、自社製の人工知能(AI)サーバー向けプロセッサ(データ処理を行う半導体チップ)の開発力を強化するため、半導体設計スタートアップ企業の買収を検討していることが明らかになった。米メディアの「The Information」が複数の関係者の証言を元に報じた。

報道によると、Appleは買収に向けて複数の半導体スタートアップ企業に打診を行い、金融機関とも交渉を開始している。現在、AppleのAIサーバーは自社製の「M2 Ultra(Appleが開発した高性能システムオンチップ)」チップで動作しているが、性能面で課題が生じているという。
本来であれば、Appleは「Baltra」と呼ばれる次世代のAIサーバー用チップを2026年内に出荷する計画だったが、このプロジェクトは延期された。今年初めには音声アシスタント「Siri(Apple製品に搭載された音声アシスタント)」の刷新に向け、GoogleのAIモデル「Gemini(Googleが開発した大規模言語モデル)」を自社サーバーでテストしたものの、Macベースの既存チップでは処理しきれず、結果としてGoogleのクラウド上にあるNvidia製チップで処理を行うことになった。Appleは歴史的に大規模な企業買収を避ける傾向にあり、直近の買収は2026年1月にオーディオAI技術を手がけるイスラエル企業「Q.ai」を買収した例にとどまる。しかし、手元資金は豊富で、2026年3月末時点で455億7000万ドルの現金を保有している。
今回の報道は、Appleが掲げるプライバシー保護重視のAI運用方針と、現実のインフラ(システムの基盤となるハードウェア設備)性能とのギャップを浮き彫りにしている。日本のユーザーにとって注目すべきは、Appleが提供するAI機能の処理性能やプライバシー保護の信頼性だ。
Appleはこれまで、機密データを自社の管理下で安全に処理する仕組みを強調してきた。しかし、自社チップの能力不足で外部クラウド(Nvidiaチップ)に処理を委託する割合が増えれば、Appleの厳格なプライバシー基準がどのように担保されるか懸念が生じる。また、日本語対応の処理を日本国内や安全な専用サーバーで完結できるかという点でも影響を受ける可能性がある。
現時点で未確認の事項として、Appleが具体的にどの半導体スタートアップを買収対象としているのか、また延期された「Baltra」の新たな出荷予定時期は明らかになっていない。さらに、前週に発表されたBroadcom(通信用半導体を主に手がける米企業)との300億ドル以上の半導体供給契約と、今回のスタートアップ買収検討がどう関連しているのかも不明である。
Appleが今回の買収検討に動いたことは、同社がAIサービスを支えるハードウェアインフラにおいても、他社依存を避けて完全な内製化を急いでいることを示している。GoogleクラウドやNvidiaへの依存は、コスト面だけでなく、Appleのブランド価値である「プライバシーの安全」を脅かすリスクがあるからだ。自社専用チップの開発が遅れる中、スタートアップの技術と人材を取り込み、自社サーバー向けチップの性能向上をいかに早く実現できるかが、AppleのAI戦略全体の成否を左右することになるとみられる。
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