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中国の革新的な人工知能(AI)スタートアップである「DeepSeek(ディープシーク)」が、約70億ドルの大規模資金調達を完了したばかりであるにもかかわらず、さらなる計算資源(データセンターなど)の拡充に向けて新たな資金調達ラウンドの交渉に入ったことが、英Financial Times(FT)の報道により明らかになりました。同社はプレマネー評価額(投資前の企業評価額)として710億米ドル(約11兆円)をターゲットにしており、早ければ2026年中のIPO(新規公開株。未上場の企業が自社株式を株式市場に上場し、一般の投資家へ提供すること)(新規株式公開)の申請も視野に入れているとされています。
報道によると、DeepSeekは今週、国内外の複数の有力投資家と新たな資金調達に向けた協議を開始しました。同社は2026年6月初旬にTencent(テンセント)や車載電池大手のCATLなどから出資を受け、外部資金調達ラウンドにおいて約500億米ドルの企業評価額を記録したばかりです。そこからわずか数週間で、評価額の目標を710億米ドルへと一気に引き上げました。
DeepSeekは2025年に、従来の米国製AIに匹敵する性能を驚異的な低コストかつ少量の計算資源(GPU)で実現した新モデルを開発し、世界に衝撃を与えました。今回の新たな資金確保の動きは、激化するグローバルなAIインフラ獲得競争において、データセンターの処理能力(コンピューティング・キャパシティ)をさらに拡張し、開発を加速させるためのものです。
DeepSeekが巨額の資金力を背景に急成長することは、日本および世界の開発者・ビジネスパーソンにとって重要な意味を持ちます。
同社の創業者であるLiang Wenfeng(梁文鋒)氏は、投資家らとの会合において「短期的な商業化(マネタイズ)よりも、技術のブレイクスルーを最優先する」言明しています。また、今後もオープンソースAI(無償で内部コードやモデルの重みが一般公開されるAI)の開発を強力に継続し、AGI(人工一般知能。人間のようにあらゆる知的なタスクを自律的にこなすことができるAI)の実現を目指すとしています。
これにより、高額なAPI(利用料)を課すOpenAIなどの米国製クローズドモデルに依存したくない日本のAIエンジニアやスタートアップ企業は、今後もDeepSeekが提供する高性能かつ安価(あるいはオープンソース)なモデルをベースにしたアプリケーション開発を続けることが可能になります。また、米国の対中ハードウェア輸出規制(先端GPUの輸出禁止など)下でも、DeepSeekが独自の効率的な学習アルゴリズムと今回の巨額資金を用いて米国の背中を追うことは、日本企業にとって「AIの多極化(米国一極集中からの脱却)」の恩恵をもたらします。
今回の資金調達とIPO準備の報道は、中国のAI企業がシリコンバレーに劣らぬ巨大な資本力と開発スピードを誇っていることを改めて示しています。特に創業者のLiang Wenfeng氏の純資産は、直近の評価額急騰により360億米ドル(約5.7兆円)に達し、世界のAIモデル創業者の中で最もユーモアのある人物(AnthropicのDario Amodei氏やOpenAIのGreg Brockman氏を抜く)となりました。
しかし、米中の技術デカップリング(対立による経済分断)が進む中、中国企業であるDeepSeekが将来的に海外(米国など)の株式市場でIPOをスムーズに行えるか、あるいは安全保障上の懸念から規制に直面するかは大きな不確定要素です。短期的な収益性よりもAGI開発を優先する同社が、上場企業に求められる株主利益(短期的な収益)とのバランスをどう取るかも、今後の大きな焦点となります。