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米AIスタートアップのAnthropicが、中国のIT大手Alibabaグループおよび同社のAI研究部門「Qwen」を対象に、同社の高性能AI「Claude」の知能を不正に抜き取ろうとする「過去最大の蒸留攻撃」を仕掛けられたとして、2026年6月10日付の書簡で米上院銀行委員会に告発しました。Anthropicの主張によると、Alibaba側は2026年4月22日から6月5日までの約44日間にわたり、約2万5,000の不正アカウントを用いて2,880万回以上のやり取りを繰り返し、Claudeのソフトウェア開発支援やエージェント推論などの中核機能を標的にしたとされています。一方で、Alibaba側はこれらの不正行為の主張を否定しています。
今回の告発における最大の特徴は、蒸留攻撃の圧倒的な規模の大きさにあります。2026年2月にAnthropicがDeepSeek、Moonshot AI、MiniMaxの中国企業3社から受けた攻撃の合計件数が約1,600万回であったのに対し、今回のAlibabaによるアクセスは1社だけでそれを大幅に上回る2,880万回超を記録しました。2万5,000件規模のアカウント運用、IPアドレスや検知回避の仕組みなど、組織的かつ大規模なインフラが使われていた可能性が指摘されています。
「蒸留」は高性能なAIモデルの応答パターンを学習データとして別の安価なAIモデルを訓練する一般的な手法ですが、競合他社の商用APIを無断かつ産業規模で利用することは知的財産権の観点から問題視されています。今回のようにソースコードではなくモデルの「振る舞い」を吸い出された場合、現行の法制度での保護が未整備であるという課題も浮き彫りになりました。また、今回の告発は、Alibabaが米国防総省から「中国の軍事企業」に指定され係争中であることや、米国政府による先端AIの輸出規制の動きなど、米中間のAI覇権争いという地政学的リスクとも深く結びついています。
今回の事件は、商用AIサービスにおける利用規約違反や知的財産保護の難しさを改めて露呈させました。API提供側は、大量かつ反復的な不審アクセスの監視体制を強化することが急務となっており、利用側も他社モデルの出力を無断で自社モデルの学習に使用しないなど、コンプライアンスの遵守が厳しく求められるようになります。
引用元:Eatransform | medium.com