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OpenAIは、ライフサイエンス(生命科学)および創薬研究に特化したAIモデル「GPT-Rosalind」シリーズの最新アップデートを発表し、適格な研究機関向けに提供を開始した。本モデルは、基盤モデル「GPT-5.5」の自律型コーディングやツール利用能力をベースに、有機化学やゲノミクス(遺伝情報を網羅的に解析する分野)などの専門領域における高度な推論性能を統合している。実用的な科学ワークフローでの推論性能が向上しただけでなく、バイオインフォマティクス(生物学と情報科学を融合した分野)を実行するための専用プラグインも同時に提供される。
本モデルの評価にあたり、外部専門家が監修するベンチマーク「LifeSciBench」が導入された。これは論文や実験記録からの証拠抽出、実験室(ウェットラボ:実験器具を使って実際の液体やサンプルを扱う科学実験室)のトラブルシューティングなど、実務的な6領域を網羅するものである。 薬化学における構造活性相関(SAR:化合物の構造と生理活性の関連性)や逆合成(目的化合物を合成する経路を逆算する手法)を評価する「MedChemBench」において、GPT-RosalindはGPT-5.5を上回る正答率(27.5%対25.1%)を達成し、消費トークン数を7.2%削減した。また、長期的なゲノミクス解析を評価する「GeneBench」でも、31%少ないトークンでより高い正答率を記録している。
研究プロセスの効率化に向けて、証拠の検索や解釈を担う「Life Sciences Research」と、次世代シーケンシング(NGS:遺伝子配列を高速に解読する技術)解析を行う「Life Sciences NGS Analysis」の2つのプラグインが、開発プラットフォーム「Codex」向けに提供される。さらに、遺伝子配列や分子構造といった生物学的な固有データをCodex上で直接可視化する「Interactive生物データビューア」も追加され、科学者が解析結果とエビデンスを同じ環境でシームレスに評価できるよう設計されている。
GPT-Rosalindは、セキュリティと倫理的妥当性を確保するため、公的利益を目的とした合法的な科学研究を行う適格組織のみを対象とした「信頼アクセス(trusted-access)」モデルで提供される。グローバル展開のパートナーとして、大手製薬企業ノボ ノルディスクが本モデルを導入し、複雑なオミクスデータ(遺伝子やタンパク質などの生体分子を網羅したデータ)と科学文献を統合した仮説検証の迅速化に役立てている。
今回のGPT-Rosalindの更新は、高度な生物学的AIを安全性と両立させながら社会実装する取り組みの一環である。薬化学の専門推論や実験室トラブルシューティングにおいて、GPT-5.5よりも高効率かつ低消費トークンで処理可能になった点は、創薬の初期段階にかかる時間とコストを削減する直接的な効果が期待される。 また、ノボ ノルディスクなどのグローバル製薬企業との連携を通じた、厳格なガバナンス下でのAIエージェント(自律的に任務を遂行するシステム)の活用は、バイオテクノロジー領域における今後のAI商業利用のモデルケースとなる可能性がある。ただし、こうした高度なAIが実際に臨床現場や薬物開発にどのような実質的価値をもたらすかについては、今後の長期的な検証が必要と見られる。