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米テキサス州のKen Paxton(ケン・パクストン)司法長官は、AIチャットボット「ChatGPT(OpenAIが開発・提供する対話型AIサービス)」がテキサス州民を欺き危害を与えているとして、開発元の米OpenAIおよび同社CEOのSam Altman(サム・アルトマン)氏を相手取り、州消費者保護法に基づく訴訟をコリン郡地方裁判所に提起した。訴状では、未成年者に対するChatGPTへのアクセス遮断や、新規モデルをリリースする際に裁判所が選任した第三者評価者による事前承認を義務付けるなど、極めて広範な差止命令を要求している。
パクストン司法長官室が発表したプレスリリースによると、提訴の根拠としてChatGPTが未成年者を依存させ、親の監視なくデータを収集している点や、自殺の助長、銃乱射犯への幇助、批判的思考力の低下といった多岐にわたる消費者被害を引き起こしていると主張している。訴状の冒頭には、2015年にアルトマン氏が語ったとされる「AIはおそらく世界の終わりにつながるだろうが、その間には偉大な企業が生まれるだろう」という発言が引用された。
司法長官側が求めている主な救済措置は以下の通りである。
これに対しOpenAIの広報担当者は、「政府はAIの強固な安全基準を設定する上で重要な役割を担っており、テキサス州をはじめとする各州と協力して、単一の企業だけでなくAI業界全体に適用される実用的なAI政策を前進させることに尽力している」との声明を発表し、安全基準の業界横断的な整備を支持する姿勢を示した。
本訴訟は、AIの安全性基準に関する純粋な法的議論にとどまらず、複雑な政治的背景を帯びている。
原告のパクストン司法長官は現在、連邦上院議員選挙に出馬している。そして同氏の選挙キャンペーンを支援するスーパーPAC(特別政治活動委員会)に対して、米実業家Elon Musk(イーロン・マスク)氏が約2億ドル(約300億円)を拠出する最大の単独支援者となっている。
マスク氏はOpenAIの共同創設者であったが、組織の方向性や所有構造を巡るアルトマン氏との対立の末に2018年に同社を離脱した。その後、競合するAI企業「xAI」を立ち上げ、ChatGPTのライバルとなる対話AI「Grok」を展開している経緯がある。マスク氏が主導するGrok自体も児童を巡る不適切画像生成問題などでカリフォルニア州司法長官の調査対象となっているが、テキサス州側はマスク氏の企業に対する法的措置は取っていない。
法曹関係者や業界アナリストの間では、一州の司法長官が裁判所の評価者による「全AIモデルの事前承認」や「未成年の完全遮断」といった極端な差止を求める要求が法的に認められるか疑問視する見方が強い。表現の自由や連邦法との整合性、技術的な実効性が大きな争点になるとみられる。
一方で、各州の司法長官が独自の消費者保護法や未成年保護法を根拠にフロンティアAI企業を個別に提訴する動きが常態化すれば、全米で分断された規制環境(パッチワーク規制)が生じ、AIモデルの開発・展開スピードに重大な影響を及ぼす可能性がある。今後の法廷闘争の推移と、業界共通の連邦規制策定への波及が注視される。