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米Metaは、自社の広告ツールなどを利用する企業のWebサイトを自社の自動クローラーが巡回・収集することを可能にする新ビジネス規約(商業規約)について、その適用開始日を当初予定していた2026年10月30日から11月20日へと約3週間延期しました。この延期は、全米2,000社以上のニュース出版者を代表する業界団体「News/Media Alliance」がMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEO宛てに規約の即時撤回を求める抗議書簡を送付した直後に発表されました。Meta側は「パートナーやステークホルダーに変更点と不変点を説明する時間を確保するため」と説明していますが、AI学習や広告開発を目的とした無断データ収集に対するメディア側の反発は欧州にも波及しています。
ReutersやFast Companyの報道によると、問題となっている新ビジネス規約は、Metaの広告サービス、Facebookページ、Instagramのビジネスアカウントなどを利用する企業を対象としています。企業がこれらのツールを利用し続けるだけで自動的に規約に同意したとみなされ、リンクされた自社サイトをMetaの自動クローラーが巡回し、広告やビジネス製品の開発にコンテンツを利用できるようになる仕組みです。
これに対し、全米の出版者団体であるNews/Media Allianceは激しく反発しました。同団体は書簡の中で、ニュースサイトが事業運営上Metaの広告配信を利用せざるを得ない構造を指摘し、広告機能を維持したままMetaのクローラーだけを実質的に遮断することは不可能であると主張。「ニュース出版者は、自社と競合する可能性のある製品の開発のために、貴重な報道コンテンツを強制的に提供させられることになる」と強く抗議し、規約の撤回を求めました。
Metaは批判を受け、規約の文言からAIモデルの学習を直接指す「train(機械学習モデルにデータを読み込ませて性能を向上させる訓練工程)(学習)」という単語を削除する修正を行いました。しかし出版者側は、修正後の表現であってもAI開発やデータ収集への利用余地が依然として残されていると指摘しています。
Metaの広報担当者は、Webサイト運営者がrobots.txt(検索エンジンやクローラーの巡回可否を制御する設定ファイル)を設定することで巡回拒否の意思表示が可能であると説明しています。しかし、広告配信に必要な通信とAI開発向け巡回の切り分けが不透明であるため、メディア側の懸念は解消されていません。
大手出版社5社がすでに自社の書籍著作権侵害を理由にMetaのLLM「Llama(Metaが開発・公開しているオープンソースの大規模言語モデル)」を相手取って集団訴訟を起こしている背景もあり、対立は深まっています。さらに欧州でも、現地出版者が欧州連合(EU(欧州連合。デジタル市場やデータ保護に関して厳格な規制方針をとる地域連合))および英国の規制当局に対して規約適用の停止を要請し、英国の競争市場庁(CMA)もMetaに説明を求めるなど、規制当局による監視の圧力も高まっています。
今回の新ビジネス規約は、日本国内でMetaの広告サービスやFacebookページ、Instagramビジネスアカウントを運用している事業者・メディア企業にとっても直接影響を及ぼす可能性があります。
多くの国内企業がマーケティング目的でMetaのビジネスツールを自社サイトと連携させていますが、規約が11月20日に発効した場合、日本国内のWebサイトに対しても同様の巡回・データ収集が適用されるのか、あるいは各国の法制度や著作権法(著作権法第30条の4など)に応じた地域別の例外規定が設けられるのかは現時点で公表されていません。また、Cloudflareなどのインフラ事業者がAI学習クローラーのデフォルト遮断機能を提供するなどの対抗策を打ち出していますが、Metaのビジネス規約との間でどのような技術的・規約的コンフリクトが生じるかも未確定な点です。
大手テック企業による生成AI開発が加速する中、高品質なWebコンテンツの収集を巡るプラットフォーマーとコンテンツ提供者の摩擦は急速に激化しています。
編集部注: Metaが規約適用を延期したことは、出版業界の強い反発に一定の配慮を見せた形ですが、規約そのものを撤回したわけではなく、本質的な方針変更には至っていません。広告プラットフォームとしての支配的な影響力を梃子に、利用規約の更新を通じてAI学習用データの収集権限を一括取得しようとする手法は、独占禁止法や競争政策の観点からも批判の対象となりつつあります。11月20日までの説明期間中にMetaがどのような妥協案や除外オプションを提示するのか、あるいは法廷闘争へと発展するのかが注視されます。