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リバースエンジニアリング解析ツール「IDA Pro(バイナリ実行ファイルを逆アセンブル・逆コンパイルして解析するセキュリティ業界標準ツール)」を開発するベルギーのHex-Raysは2026年10月18日、セキュリティ調査向けAIエージェントプラットフォームを開発するイスラエルのスタートアップHexAI(旧社名Ventris)を3000万〜3500万ドルで買収することで合意した。イスラエルの経済メディアctechが報じた。設立わずか1年、外部からの資金調達を一切行わずにわずか6人のチームで開発を続けてきたブートストラップ企業の買収であり、サイバーセキュリティの解析自動化における大型再編となる。

HexAIは、イスラエル軍の精鋭サイバー部隊「Unit 8200」出身の25歳の創業者Elon Gliksberg氏が2025年にステルス状態で設立した。同じくUnit 8200出身のAmit Schendel氏が最高技術責任者(CTO)を務める。
同社が開発したプラットフォームは、セキュリティリサーチャーがAIエージェントを活用して脆弱性調査のワークフローを構築・実行・検証するための「エージェント用オペレーティングシステム」である。ソースコードだけでなくコンパイル済みのバイナリファイルを解析し、既知の脆弱性(CVE)に加えてゼロデイ脆弱性(修正パッチが提供されていない未公表のソフトウェア欠陥)、マルウェア、バックドアを検出する能力を持つ。
従来の汎用AIエージェントは高コストで誤検知やハルシネーション(もっともらしい嘘)が多い課題があったが、HexAIは検証可能な評価フレームワークを導入。高価な商用プロプライエタリモデルに依存せず、オープンソースモデル上でも高精度な解析を可能にし、トークン消費コストを大幅に削減した実績を持つ。さらに、外部ネットワークから物理的に隔離された「エアギャップ環境(機密情報漏洩を防ぐため外部ネットワークから物理的に遮断された運用環境)」でも動作する設計となっており、政府機関や高度な民間セキュリティ組織を顧客に抱えている。
本買収により、HexAIの全従業員6名はHex-Raysに合流し、イスラエル拠点を拡大する。35年の歴史を持ちバイナリ解析のデファクトスタンダードとして世界中で利用されているIDA Proの技術基盤と、HexAIの自律エージェント基盤が直接統合される。
今回の買収劇は、巨額のVCマネーを投じた汎用エージェント開発競争とは対照的に、ドメイン特化(セキュリティ解析)に絞り込んで外部調達なしで実用性を極めたスタートアップが高額買収を勝ち取った象徴的な事例である。AIエージェントの価値は単なる会話能力ではなく、業界固有の難解な課題(バイナリ解析・形式検証・オフライン動作)をいかに堅牢に解けるかにあることを示している。
引用元:ctech