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NVIDIAは2026年9月28日、AIデータセンター(AIファクトリー)の受電電力上限(電力バジェット)を有効活用し、スループットと電力効率を大幅に引き上げる動的電力管理基盤「DSX MaxLPS」の技術検証レポートを公式技術ブログで公開しました。クラウド事業者のNscaleと共同で行われた実証実験において、同一の受電電力バジェット(264.4kW)を維持したまま、稼働GPU数を最大40%近く増設し、クラスタ全体の総スループットを49.2%向上させたことを実証しました。

従来のデータセンター電力設計では、全ノード・全GPUが同時にピーク電力に達する最悪シナリオを前提に電源容量を割り当てる「静的プロビジョニング(Static provisioning)」が一般的でした。しかし、AIの学習や推論ワークロードは通信・計算・同期などフェーズによって電力消費が激しく変動するため、通常運用時には大量の契約電力が使われずに取り残される「遊休電力(Stranded power)」が生じていました。
NVIDIAが発表した「DSX MaxLPS」は、土地・電力・建屋シェル(Land, Power, Shell constraints)の制約下で最大の計算出力を引き出す統合制御ソリューションです。基盤ソフトウェアの「Dynamic Power Software」が各ノードやラックの消費電力をリアルタイムに監視し、電力消費の低いリソースの余剰枠を負荷の高いGPUへ動的に融通します。
実証実験は、アイスランド・ケフラヴィークのVerneキャンパスにあるNscaleの再生可能エネルギー100%データセンターで実施されました。検証環境には「NVIDIA GB300 NVL72」システム(NVIDIA Blackwell Ultra GPU搭載)を採用し、大規模言語モデル「Kimi K2.5」(FP4精度)による高スループット推論と低遅延推論を混在させた実運用負荷を測定しました。

同一の契約電力バジェット(264.4 kW)下での測定結果は下表の通りです。
| 指標 | 静的ベースライン | DSX MaxLPS | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 管理GPU数 | 140 基(35ノード) | 192 基(48ノード) | +37.1% |
| 総スループット | 1,084,503 tokens/s | 1,618,443 tokens/s | +49.2% |
| 高スループット推論出力 | 59,153 tokens/s | 59,220 tokens/s | +0.1% |
| 低遅延推論出力 | 2,265 tokens/s | 2,265 tokens/s | 0% |
| 平均GPU電力 | 97.0 kW | 131.8 kW | +35.9% |
| 総測定電力 | 166.2 kW | 198.9 kW | +19.7% |
| 電力バジェット利用率 | 62.9% | 75.2% | +12.3 ポイント |
| 契約1Wあたりスループット | 4.10 tokens/s/W | 6.12 tokens/s/W | +49.2% |
注目すべき点は、個々の推論インスタンスの出力性能を損なうことなく、GPU群全体の並行稼働数を増やして総出力を49.2%拡大させた点です。契約電力1Wあたりのスループットも4.10 tokens/s/Wから6.12 tokens/s/Wへと同率で改善しています。

DSX MaxLPSの導入にあたっては、以下の制約と技術的留意点が存在します。
編集部注: 生成AIの急速な普及に伴い、データセンター事業者が直面する最大の制約はGPUの調達そのものから「受電電力容量の壁」へと移行しています。DSX MaxLPSのように、物理的な電源設備を増設することなくソフトウェアレイヤーで電力の山谷を平滑化し、ハードウェア稼働率を限界まで高める技術は、AIインフラの投資対効果を劇的に改善する基盤技術として業界の標準的アプローチになるとみられます。