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米Googleのプロダクトセキュリティチームは、自社の第1パーティWebアプリケーションを対象に脆弱性の自動検出と実証を行う社内AIエージェントプロジェクト「PageBreak(Googleのプロダクトセキュリティチームが開発した脆弱性実証AIエージェント)」の技術詳細を公式セキュリティブログで公開しました。大規模言語モデル(LLM)を静的解析に用いた際に発生する大量の誤検知(AI slop)を排除するため、非AI製の専用バリデータを用いて実環境で攻撃コード(PoC)を実行・確認する「決定論的検証」を採用し、社内で500件以上のXSS(クロスサイトスクリプティング)を実証した実績を報告しています。
LLMを用いたセキュリティスキャンでは、コードの脆弱性を推測できても「実際に悪用可能か」の判定が難しく、開発チームが大量の不確実な報告への対応に追われる運用上のボトルネックが発生していました。PageBreakはこの課題を解決するため、仮説生成と実証検証を明確に分離したパイプラインを採用しています。
PageBreakの基盤には主に「Gemini 3.1 Pro」や「Gemini 3.5 Flash」が使用されていますが、脆弱性候補の検証はAI自身ではなく、あらかじめ厳格に設計された非AI製の専用バリデータが担当します。
| 脆弱性種別 | バリデータによる実証手法 |
|---|---|
| XSS | JavaScriptペイロードを注入し、レンダリング環境でスクリプトの実際の実行を監視 |
| SQLインジェクション | ペイロードを注入し、DBクエリのレスポンス変化や応答遅延(タイミング)を検証 |
| パストラバーサル | 書き込み可能領域にテストファイルを生成し、アプリ側から読み取り可能か確認 |
| リモートコード実行(RCE) | sleep遅延の発生、特定領域へのファイル生成、外部DNS/HTTPリクエスト発信を確認 |
| SSRF | アプリケーションが内部バックエンドサービスへ不正リクエストを送信したかを監視 |
実環境で攻撃の成立が実証された高確度の報告のみが開発チームへ送られるため、誤検知率はほぼゼロに抑えられています。
Googleは社内で推進している安全設計Webフレームワーク(Safe-by-design Web Framework)の堅牢性を検証するため、PageBreakを用いた網羅的な攻撃テストを実施しました。
数千億行におよぶGoogleの単一モノレポ(Mono-Repo)と、本番HTTPトラフィックから抽出したセキュリティシグナルを活用して攻撃対象領域を徹底的に探索した結果、安全設計フレームワーク上に構築された数百のWebアプリ群では、2026年9月4日時点で検出されたXSSはわずか2件にとどまりました。その2件も内部向けアプリやデバッグ用エンドポイントにおける設定不備に限られており、設計段階で脆弱性を構造的に排除するフレームワークの優位性が実証されました。
一方で、非決定論的な探索結果(現行バリデータでは完全実証できなかった候補)は開発チームへのアラートとはせず、PageBreak自身のバリデータ機能拡張や将来のスキャンのシードデータとして社内フィードバックループに還元されています。
Googleは現在、PageBreakによる高精度な脆弱性検出を、同社の自動コード修正エージェント「CodeMender」と直接連携させる取り組みを進めています。
脆弱性の発見、実環境でのPoC実証、パッチコードの自動生成までをエージェント間で自律完結させ、人間のエンジニアは提示された修正案の妥当性確認と承認のみを行う体制を目指しています。高度化するサイバー攻撃に対抗する上で、モデルの幻覚(ハルシネーション)を決定論的ツールで抑え込みながら防衛サイクルを自律加速させる本プロジェクトは、次世代アプリケーションセキュリティの先行事例といえます。
引用元:Google