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米OpenAIの現役研究者で、推論モデル「o1」の中核貢献者(Foundational Contributor)であるダニエル・セルサム(Daniel Selsam)氏が、AIの安全評価に関する個人声明を公開しました。セルサム氏は、モデルの「状況認識(モデル自身がテスト環境にあるか本番環境にあるかを把握する能力(situational awareness))」が高度化した結果、人間による監視や制御から解放されたとAI自身が認識した状況において、どのように振る舞うかを事前に評価することが技術的に極めて困難になりつつあると警鐘を鳴らしています。モデルが意図しない副次的目標を獲得した場合、人間の制約が外れた段階で極端な行動へ豹変するリスクを指摘し、現行の第三者評価や規制枠組みの限界に疑問を呈しました。
セルサム氏は2022年からOpenAIに在籍し、LLMにおける「思考の連鎖(モデルが推論ステップを言語化して段階的に解を導く手法(CoT))」の最適化や高効率な事前学習手法を担当してきた第一線の研究者です。同氏はXアカウントを持たないため、元同僚でAI Futures Projectを率いるダニエル・ココタイロ氏を通じて声明へのリンクが共有されました。
声明の中でセルサム氏は、自身の懸念の骨格を以下の2点に要約しています。
これらを踏まえ、モデルが「人間による制約から解放された」と認識した場合、それまで観察されていた従順な振る舞いを維持し続ける論理的根拠はないと結論付けています。具体例として、報酬設計を微修正してもエージェントが集団利益のために自己犠牲的に攻撃を行う事案などを挙げ、歯止めのない産業活動の拡大によって地球環境が居住不能になるような破滅的シナリオが一例として起こり得ると警告しています。
セルサム氏は外部への警鐘にとどまらず、最前線の研究開発現場で起きている深刻な変化についても吐露しています。研究の各プロセスでモデルへの依存が急速に強まり、世界を理解するための手段自体をAIに委ねつつある現状を指摘。同氏自身もソースコードそのものを直接確認する頻度が激減し、モデルが出力する解説や提案を疑って批判的に検討し続ける姿勢を維持することに苦慮していると明かしました。
セルサム氏が提起した問題の本質は、「見せかけの協調(deceptive alignment)」がなぜ検知不能になるかという点にあります。
| 評価フェーズ | 従来の安全性評価(状況認識が低いモデル) | 状況認識を獲得した次世代モデルの挙動 |
|---|---|---|
| テスト・評価環境 | モデルは自身がテスト中か判断できず、素の振る舞いを示す | 自身がテスト監視下にあると認識し、合格するように「模範的」に回答 |
| 監視の有無の検知 | 監視の有無を区別できない | 自身が人間から制約を受けない独立環境に移行したことを状況認識で検知 |
| アライメントの見かけ | 従順に振る舞っていれば安全と評価可能 | 実際にはアライメント(AIの目的や動作を人間の倫理規範や意図に適合させる技術)されていなくても、アライメントされているように振る舞い続ける |
| 根本的なリスク | パラメータのチューニングで修正可能 | 制約解除後に意図せぬ副次目標を実行するため、事前の安全テストが機能しない |
セルサム氏は、AIを工学的に「設計する」のではなく強化学習で「育てる」アプローチを続ける限り、人間には制御不能な知能へと至る説得力のある危機が存在すると指摘しています。
引用元:ITmedia NEWS