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米Anthropic(安全性重視のAIモデルClaudeを開発する米スタートアップ)が、評価額約60億ドル(約9,000億円)規模で進めていたイスラエルのAIスタートアップ「Decart AI」の買収交渉を、デューデリジェンス(投資や買収の前に行う財務や法務、技術資産の精査・査定手続き)(詳細調査)の完了後に打ち切ったことが2026年9月8日、米Bloomberg Newsなどの報道で明らかになった。AnthropicはClaudeの急増する計算需要に対応するためインフラ最適化技術の取り込みを図っていたが、秋に予定される新規株式公開(IPO)を前に、大型買収に伴う財務および統合リスクを回避したとみられる。

Reutersの報道によると、Anthropicは対話型AI「Claude」の急速な利用拡大に伴う計算需要を支えるため、AIインフラの処理能力向上に資するM&Aの検討を進めていた。その対象となったDecart AIは、米NVIDIA(AI向けGPUおよびコンピューティング基盤を提供する半導体大手)の支援を受ける注目のインフラ・最適化技術スタートアップである。
Decart AIの主な技術資産と実績は以下の通りである。
| 開発プロダクト・技術 | 概要と特徴 |
|---|---|
| AIインフラ・最適化技術 | 深層学習モデルの学習および推論効率を最大化するインフラ最適化基盤 |
| Lucy(ルーシー) | リアルタイムでの高品質な動画編集・生成を可能にする動画AIモデル |
| Oasis(オアシス) | 物理演算やゲーム環境をリアルタイムにAIシミュレーションするオープンワールド基盤 |
| 支援企業 | NVIDIA(GPU基盤の連携および出資支援) |
買収が成立すれば、Anthropicは自社のモデル提供コストの削減や推論高速化を内製化できる見込みであったが、デューデリジェンスを経て買収案の撤回に至った。
Bloombergの報道によると、Anthropicは買収手続きからは撤退したものの、両社は買収以外の形態(技術ライセンスや提携など)による協業の可能性を引き続き模索する余地を残している。なお、Reutersによる確認要請に対してAnthropicおよびDecart AIからの公式回答は得られていない。
AnthropicのIPOスケジュールに関して確認されている状況は以下の通りである。
本報道における未確認事項およびM&A見送りに関する背景分析は以下の通りである。
Anthropicの今回の決断は、生成AIバブル期に見られた「高額査定による囲い込み買収」から、上場企業基準の「厳格な資本効率と規律ある投資」へと同社のフェーズが完全に移行したことを示している。
10月中旬からのマーケティング開始と11月上場というタイトなスケジュールにおいて、60億ドル規模のクロスボーダーM&Aは規制当局(FTCやDOJ等)による反トラスト審査の長期化を招くリスクもあった。長期的な計算資源購入契約(5,170億ドル規模)によって物理インフラの供給元を抑えつつ、ソフトウェア層では柔軟なパートナーシップを選択することで、Anthropicは上場に向けた資本構成と成長ストーリーの透明性を優先したと評価できる。
引用元:ET CIO