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Perplexityは2026年07月14日、AIエージェントによる大規模かつ証拠付きのデータ収集能力を評価するためのオープンベンチマーク「WANDR(Wide ANd Deep Research)」を公開しました。
「WANDR」は、競合製品の調査やデューデリジェンス(投資対象企業の事前調査)、製品比較、文献レビューなど、人間がAIエージェントに実際に依頼する現実的な知識労働タスクを模した500のタスクで構成されています。 評価の仕組みは、前身である長文レポート作成能力を測るベンチマーク「DRACO(Perplexityが開発したディープリサーチ能力の評価ベンチマーク)」が「深い(Deep)レポート」を求めたのに対し、WANDRは「広い(Wide)収集と深い裏付け」を求める点が特徴です。
各タスクは、数十から数千件の検証可能なレコードで構成され、データ階層構造(例: 企業→従業員→証拠URL)を正しく構築できるかを評価します。

検証の結果、既存の主要な商用システム(hosted search APIsや一般的なWebエージェントAPIなど)は極めて低いスコアに留まりました。 最も高いスコアを記録したのは、Perplexityのプログラム型検索オーケストレーションシステムである「Search as Code (SaC)(検索・フィルタリング・データ結合などのロジックをコードとして表現し実行する検索手法)」ですが、それでもsoft F1(部分点を認める評価)で0.363、すべてのデータ階層が完全に一致していることを求める厳格なhard F1ではわずか0.133(13.3%)でした。その他の商用APIやエージェントの多くは、soft F1でも0.121以下、hard F1で0.035以下という結果になり、広域かつ深層のデータ調査タスクがAIにとって極めて難易度が高いことが浮き彫りになりました。

本ベンチマークが示したAIのボトルネックについて、前身の「DRACO」との役割比較および詳細な分析結果を表に整理します。
| 評価軸 | DRACO (前身ベンチマーク) | WANDR (今回公開) |
|---|---|---|
| 主な評価対象 | 長文レポートの正確性・完全性・客観性 | 大規模データの収集と、全項目への証拠付与 |
| データ構造 | 単一のテキスト・フラットなレポート | 階層化されたレコード構造 (例: $n$企業 $\rightarrow$ $m$従業員) |
| ボトルネック | 長文の論理構成、情報の客観的要約 | 情報の発見(Discovery)と網羅的な証拠の抽出 |
Perplexityの分析によると、AIエージェントの失敗の主因は「適切なページを見つけられないこと」ではなく、「見つけたページから、タスクの要求を満たす完全な証拠を抽出・裏付けられないこと」にあります。提出されたページの90%以上はアクセス可能で適切なものであったにもかかわらず、提出された引用抜粋(excerpts)の57.5%〜86.6%が必要な情報を十分にサポートできていませんでした。
WANDRの登場は、AIエージェントの評価手法を単なる「もっともらしいテキスト生成」から「厳密な事実データ構築」へとシフトさせる重要な一歩です。 特に、データ項目ごとの検証結果(部分点)が得られるため、強化学習(RL)の報酬設計への応用が期待されます。開発者は単一の最終報酬ではなく、どの階層のデータ収集で失敗したかのフィードバックを用いてエージェントの計画能力や誤りからの回復能力を学習させることが可能になります。実用的なビジネス・インテリジェンス(BI)ツールとしてAIエージェントが自律動作するためには、こうした構造化されたデータ検証ベンチマークでのスコア向上が不可欠となるでしょう。