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アリババが、従業員に対しAnthropic製AIツールとClaude Code(Anthropicが提供するAIコーディング支援ツール)の業務利用を全面禁止した。Anthropicによる蒸留攻撃の告発を受けた措置であり、代替として自社製AIアシスタントへの移行が進められている。
CNBCが2026年7月6日に関係者の情報として報じたところによると、アリババはAnthropicのClaude(Anthropicが開発する大規模言語モデルシリーズ)関連製品を社内の「高リスクソフトウェア」リストに追加した。従業員にはAnthropicのモデルおよびエージェント製品のアンインストールが指示され、代わりにアリババ独自のAIコーディングアシスタント「Qoder(アリババが開発した自社製AIコード作成支援ツール)」の利用が求められている。
今回の禁止措置の背景には、Anthropicがアリババに対して行った強い告発がある。Anthropicは、アリババが自社のAIモデルから能力を不正に抽出する「蒸留攻撃(高性能AIモデルの出力を大量に収集し、別のモデルの訓練データとして利用する手法。知的財産の窃取として問題視されている)(distillation attack)」を「大胆に」かつ「不正に」実行したと主張し、これを「過去最大規模の蒸留攻撃」と形容した。
蒸留攻撃の手口は、大量の精巧に構成されたプロンプトを標的モデルに送信し、その応答を訓練データとして回収するというものだ。PYMNTS.comの報道では「研究費用を払わずに、元のモデルの推論や応答を複製するよう競合モデルに学習させる」行為であり、「ハッキングというより、クラスで最も優秀な生徒の隣に座って全回答を写すようなもの」と説明されている。検出が困難な点も特徴で、蒸留用のクエリは正規の利用と区別がつかず、大量・反復的な構造パターンや数百の協調アカウントからの連続的なリクエストといった統計的な兆候でしか判別できないという。
Anthropicは2026年2月にも、DeepSeek・MiniMax・Moonshot AIの中国テック企業3社に同様の攻撃を行ったと告発し、業界・政策立案者・国際AI社会に対して防止策の協力を呼びかけていた。さらにAnthropicの利用規約(サービス提供者が定めるサービス利用の条件。Anthropicは中国など特定の国の組織による利用を禁止している)では、中国をはじめとする「adversarial nations(敵対的国家)」の企業によるモデル使用を禁じている。
今回の事例は、外部AIツールの業務利用に関するリスク管理の重要性を改めて示している。Googleの脅威インテリジェンスグループも2026年2月のブログ記事で「LLMの独自ロジックや専門的訓練が高価値の攻撃対象として浮上している」と警告しており、AIモデルの知的財産保護は企業横断の課題となっている。
アリババが外部AI製品を排除し自社製ツールへの一本化を進めた点は、米中間のAI技術をめぐる規制対立がサプライチェーンレベルにまで波及していることを示す具体例といえる。日本企業にとっても、海外製AIの業務導入にあたって利用規約上の地理的制限やデータ流出リスクを精査する必要性が高まっている。蒸留攻撃への対策技術や国際的な規範整備の動向が、今後のAI業務利用の枠組みを左右する重要な論点となるだろう。アリババのAI戦略全般については、アリババ、Claude Codeを全社禁止 隠しコード懸念でやアリババのClaude Code社内禁止の背景、アリババ、開発用AI「Claude Code」を社内禁止へも参照されたい。