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理化学研究所(理研)は2026年6月5日、日本政府(文部科学省・経済産業省)と米国エネルギー省(DOE)が署名した、科学向けAI(科学研究に特化した人工知能技術、AI for Science)における戦略的パートナーシップに関する意向表明書(SOI)を歓迎する五神真理事長のメッセージを公表しました。本提携は、米国政府が推進する国家プロジェクト「ジェネシス・ミッション(Genesis Mission)」の下で、総額10億ドル規模の日米戦略的AI連携を構築するものです。日本は本プロジェクトにおける「最初の国際パートナー」として位置づけられ、理研は日本の総合科学技術力を結集して主体的に参画する姿勢を明確にしました。
五神理事長は、自ら考えて自律的に行動する「AIエージェント」の成長が、科学研究の現場に大転換をもたらしていると指摘しました。AIは単なる計算やデータ解析の道具にとどまらず、実験、理論、シミュレーションと並ぶ新しい研究基盤として位置づけられ、研究者のパートナーへと進化しています。さらに最近では、複数のAIエージェントが自律的に連携し、人間が直接指示を出さなくても新しい科学的発見を行うレベルに達しています。これにより、人類共通の資産である「科学知を創出するプロセス(科学のOS)」そのものが高度化し、発見のスピードが飛躍的に高まっていると説明されています。
ジェネシス・ミッションには、日米の最先端のスーパーコンピュータなどの計算資源や民間AI企業が多数参加します。この中で日本が主体的な地位を築くためには、国家の知の源泉となる貴重な研究・企業データや、独自の科学AI、それらを支える国内計算基盤を自国で管理・保持する「AI主権(AI Sovereignty)」の確立が必要であると訴えています。その上で、オープンに共有すべき研究データと、機密として保護すべきクローズドデータを適切に管理する「オープン&クローズ」の枠組みを日米共同で構築し、国際的なエコシステムにおける「戦略的不可欠性(他国にとって代替不可能な存在となること)」を確保することが求められます。
理研は、2022年からデータ駆動による科学変革を進める「TRIP」事業(研究プラットフォームの変革プロジェクト)を開始し、2023年にはAI for Scienceを掲げる「TRIP-AGIS」(科学研究基盤モデル開発プログラム)を立ち上げ、米国のアルゴンヌ国立研究所などと事前に連携の基盤を築いてきました。今回の合意により、理研が持つスーパーコンピュータ「富岳」、放射光施設「SPring-8」、量子技術などの巨大な総合科学資源をフルに掛け合わせ、最先端の科学的発見を日本国内へ還流させます。
日米による10億ドル規模の「ジェネシス・ミッション」下での戦略的AIパートナーシップは、単なる一方向の技術提供や共同研究ではなく、AI時代における国際的な科学知創出の主導権(プラットフォーム)を共同で構築しにいく重要な投資となる見込みです。編集部注:理研が総合科学機関としての強みを活かしてこの歴史的枠組みを先導することは、日本の「AI主権」の確立と、グローバルな科学技術イノベーションエコシステムでの独自の立ち位置を揺るぎないものにする上で決定的な一歩になると見られます。今後は、日米の計算資源の連携が具体的にどのように進み、どのようなブレイクスルーが国内に還元されるか、その実行プロセスが注視されます。