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米国商務省の産業安全保障局(BIS。輸出管理などを担当する政府機関)は2026年5月31日, 輸出規制対象である高性能AIチップ(大量のデータを高速処理する半導体)の輸出に関する新たなガイダンスを発表しました。このガイダンスでは、実質的な親会社が中国またはマカオにある企業に対し、シンガポールやマレーシアといった第三国の海外法人を経由する場合であっても、輸出ライセンスを義務付けることが明確にされました。これにより、過去約1年間にわたり存在していたとされる、東南アジアの現地法人を迂回してNVIDIA(エヌビディア)製の高性能GPU(画像処理やAI計算に特化したプロセッサ)を調達するルートが実質的に封鎖される見通しです。
BISは、最先端AIチップの輸出制限が「実質的な親会社が中国またはマカオにある事業体」に対して、所在地に関わらず適用されることを強調しました。米国政府はこの措置について新規の規制ではなく、2023年11月から有効であった規則の「明確化」であると説明しています。 この背景には、2025年5月にトランプ政権が前バイデン政権の起草した「AI Diffusion Rule(AIチップの輸出制限を世界規模で強化する規則)」の施行を見送ったことで、規制のグレーゾーンが発生した経緯があります。多くの中国企業はこの隙を突いてシンガポールやマレーシアにデータセンターを急設し、高性能チップの大量購入に動いていました。今回の明確化により、今後の追加購入や次世代モデル(Blackwell世代など)への更新は事実上不可能となりますが、既に稼働しているデータセンターの保有する規制対象チップの利用停止までは求められません。
専門家からは、複雑なグローバル資本関係の中で実質的な親会社を追跡・特定するのは容易ではなく、規制の実効性には課題が残るとの指摘も上がっています。中国企業がさらなる仲介業者を挟んだり、クラウドサービス経由で計算資源を利用したりする代替策を模索する可能性も懸念されています。 一方で中国政府は国内企業に対し、NVIDIA製チップの代替としてHuawei(ファーウェイ)の「Ascend 920」などの国産AIチップの採用を促していますが、国産チップの性能は規制対象外であるNVIDIAの低スペックモデル「H20」と同等クラスにとどまっており、中国企業の技術開発には依然として大きな制約が存在していると見られます。
今回のガイダンス公表により、東南アジア経由で高性能AIチップを調達していた中国系事業者や、これらを利用していたAI開発企業は、将来的なインフラのアップデートが著しく困難になるなどの打撃を受けると予想されます。既存のデータセンター設備は当面維持できるものの、次世代の高性能モデルへの更新が制限されるため、中長期的にAI開発の速度が鈍化する可能性があります。米国政府による対中半導体輸出規制の執行監視は、今後さらに強化されるとみられています。