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米AI大手のAnthropicは、欧州連合(EU)のサイバーセキュリティ機関であるENISA(欧州ネットワーク・情報セキュリティ機関)に対し、同社のサイバーセキュリティ特化型AI「Claude Mythos」へのアクセス権を提供することで合意しました。この提供は「Project Glasswing」と呼ばれる制御されたアクセス権プログラムを通じて行われます。これまで米国企業や政府、英国の金融機関などに限定されていたアクセスをEUに拡大する形となり、数週間にわたる両者間の緊張関係に終止符が打たれる見通しです。
「Claude Mythos」は、主要OSやブラウザなどから1万件以上の深刻なゼロデイ脆弱性(修正プログラムが公開される前のセキュリティ上の欠陥)を自律的に検出した実績を持っています。EU側では、欧州の銀行や重要なインフラが使用するソフトウェアに脆弱性が発見されているにもかかわらず、その情報が欧州の機関に共有されないことへの懸念が高まり、欧州中央銀行(ECB)やEU加盟国の財務大臣らがアクセス権の付与を求めて強く圧力をかけていました。今回の合意により、ENISAはEUの機関として初めてProject Glasswingに参加することになります。
アクセス権の付与には合意したものの、データの主権に関する規定や、発見された脆弱性情報のEU加盟国間での共有ルール、検証対象となるシステムの範囲といった具体的な詳細条件については、現在も交渉が続けられています。また、米国製AIインフラへの依存を危惧する欧州の金融界やAI企業の間では、すでにBNPパリバやフランスのMistral AIが独自のセキュリティAIの共同開発に乗り出しており、今回の合意成立に関わらず欧州独自の代替技術開発は継続される見込みです。
今回のAnthropicによるENISAへのアクセス提供合意は、AI規制を進めるEU当局と米テック企業の間の摩擦を一時的に緩和する象徴的な出来事となりました。しかし、今回の合意がEU加盟国の各国機関や金融機関への直接のアクセス拡大を即座に意味するものではありません。業界関係者の間では、重要インフラのセキュリティ機能を米国企業に依存することへの警戒感は依然として根強く、長期的には欧州独自のAI主権(自国でAI技術をコントロールする概念)を巡る議論や開発がさらに加速するものと見られます。