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KDDI株式会社は2026年10月22日、レベル4自動運転において、1人の監視者が多数の車両を同時に見守る「1対N型遠隔監視」を支援するAIエージェントを開発したと発表した。VLM(画像や映像と自然言語を同時に理解・処理する視覚言語モデル)を活用し、車載カメラの映像と車両データをリアルタイムに解析する。異常発生時に車両の状況変化を追随して対応優先度を動的に更新し、推奨される対処方法とその判断理由を画面上に提示する。KDDIの「モビリティコントロールセンター」において2026年11月から模擬実証を開始し、2027年以降の早期社会実装を目指す。

遠隔監視型のレベル4自動運転では、道路交通法に基づき、異常時の状況確認や遠隔操作などを担う「特定自動運行主任者(監視者)」の配置が義務付けられている。しかし、将来的に自動運転車両が普及し、1人の主任者が数十台から数百台の車両を監視する運用環境では、複数車両で同時にアラートが発生した場合の判断遅延が大きな課題となる。
今回開発されたAIエージェントは、以下の2つの主要機能によって監視者の認知負荷を大幅に低減する。
車両や運行管理システムから異常アラートを受け取ると、AIエージェントは直ちに対象車両とその周辺環境の分析を開始する。特徴的なのは、アラート発生時の一時点だけでなく、車両が安全停止した後の状況変化も継続して監視し続ける点にある。
例えば、停車後に後続車が接近したり、路上へ落下物が飛来したりするなど周辺環境が悪化した場合、監視者が別の車両に対応中であっても、各車両の危険度に応じて対応優先度リストをリアルタイムに並び替える。これにより、事態が急変した車両の見落としを防ぐ。
車載カメラの映像とセンサー等の車両情報をVLMで統合分析し、「緊急通報」「現場駆け付け手配」「遠隔発進指示」といった具体的な推奨対応を提示する。その際、単に指示を出すだけでなく、「なぜその対応が必要と判断したのか」の理由を画像上の注目領域と平易なテキストで画面に明示する。監視者は提示された根拠を確認したうえで迅速に最終判断を下すことができる。
日本政府は「第3次交通政策基本計画」において、2030年度までに国内で自動運転サービス車両を1万台導入する目標を掲げている。深刻な運転手不足に直面する地方自治体やバス・トラック業界にとって、自動運転は地域公共交通や物流網を維持する切り札とされる。
| 運用方式 | 監視体制 | 主な特徴と課題 |
|---|---|---|
| 従来の遠隔監視 | 1対1(車両1台に監視者1名) | 安全性は高いが、人件費が削減できず運行採算性の確保が困難 |
| 1対N型遠隔監視(本エージェント) | 1対N(監視者1名が多数台を巡回・統括) | 運行コストを大幅削減可能。同時多発異常時の認知負荷をAIが肩代わり |
KDDIはすでに、2025年7月に新東名高速道路での自動運転トラック実証、2026年10月からはグループのKDDIスマートモビリティとともに茨城県つくば市での自動運転路線バスの遠隔監視運用を手がけている。
一方で、今回の発表はコントロールセンター内での「模擬実証」段階にとどまる。豪雨や吹雪といった悪天候時のカメラ映像劣化に対するVLMのロバスト性(堅牢性)や、通信途絶時の挙動、さらには事故発生時におけるAIの推奨と特定自動運行主任者の法的責任の境界線など、実道での商用運用に向けて検証すべき技術的・制度的課題は残されている。
通信大手であるKDDIが遠隔監視AIの開発を主導する背景には、自動運転時代におけるデータ通信・管制インフラの主導権を握る狙いがある。
編集部注: 車両単体の自動運転ソフトウェア(認識・判断・制御)は自動車メーカーや専業スタートアップが先行しているが、レベル4の商用運行では5Gをはじめとする大容量・低遅延通信と、フリート全体を安全に統括する地上管制システムが不可欠となる。KDDIはモビリティコントロールセンターを核にAIエージェントを組み込むことで、運行管理ソリューションを自治体や交通事業者へ包括提供するビジネスモデルの確立を急いでいるとみられる。
引用元:KDDI株式会社