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米NVIDIAは2026年10月21日(現地時間)、工学や科学分野の大規模シミュレーションをGPUで高速化する新ライブラリ「NVIDIA cuDSS(大規模な疎行列直接ソルバーをGPUで計算するためのCUDA-Xアクセラレーションライブラリ)」(CUDA Direct Sparse Solver)の一般提供(GA)を開始したと発表しました。航空機・先端半導体・産業機械などの設計プロセスにおいてボトルネックとなっていた「大規模疎行列の直接解法」をGPUにオフロードすることで、従来のCPU処理と比較して最大10倍の計算スループットを実現します。

現代の先端製造業や物理科学研究では、製品を実際に試作する前にコンピューター上で挙動を予測する数値シミュレーションが不可欠となっています。しかし、モデルが高精度・複雑化するにつれて方程式の求解に膨大な時間がかかり、検証できる設計案の数が制限される課題がありました。
cuDSSは、シミュレーションの反復処理の中で最も計算負荷が高い「疎行列(大部分の要素がゼロである行列)の直接解法」をGPUで並行処理します。すでに主要なエンジニアリングソフトウェア企業が自社ツールへの統合を進めており、具体的な高速化実績が公表されています。
工学シミュレーションで広く利用されてきた従来のCPUベース疎行列直接ソルバー(Direct Sparse Solver)と、今回GAとなったcuDSSの主な特徴の比較は以下のとおりです。
| 項目 | 従来のCPUソルバー(Intel MKL PARDISO等) | NVIDIA cuDSS(CUDA-X) |
|---|---|---|
| 主計算デバイス | マルチコアCPU | NVIDIA GPU(単体ワークステーション〜HPCクラスタ) |
| 計算スループット | コア数とメモリ帯域がボトルネック | GPUの広帯域メモリと並列処理コアを活用し最大10倍高速 |
| 対応言語・API | C / Fortran中心 | C、C++、Python、Fortranの各インターフェースに対応 |
| 展開容易性 | 既存コードの修正が必要なケースが多い | 標準的なAPI設計により既存CAE・EDAツールへ迅速に組み込み可能 |
| スケーラビリティ | 単一ノード内のSMP並列が中心 | 1台のPCから複数ノードの大規模クラスタまで拡張可能 |
日本には自動車、精密機械、半導体材料・製造装置などの高度な製造業基盤が存在し、CAE(計算力学支援)やEDA(電子設計自動化)ツールによるシミュレーションの高速化は国際競争力に直結する重要テーマです。
今回のcuDSSのGAにより、Dassault Systèmes(Abaqus)やSiemens(STAR-CCM+)、Synopsys、Cadenceといった日本の製造業で標準的に使われている商用CAE/EDAツールにおいて、順次GPUによる大幅な高速化の恩恵を受けられる環境が整います。従来のCPUクラスタで数日〜数週間かかっていた設計検証サイクルが短縮され、試作回数の削減や開発期間の短縮につながるとみられます。
なお、現時点では各商用ソフトウェアの次期アップデートにおけるcuDSS組み込みバージョンの国内提供開始時期や、ライセンス体系への影響については各ベンダーからの個別発表を待つ必要があります。NVIDIAはGTC Berlinの展示ブースにてDassault SystèmesとともにcuDSSの実機デモを公開しており、製造業のデジタルツインやフィジカルAI開発を支える計算基盤として普及が進むとみられます。
引用元:NVIDIA Blog