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企業における自律型AIエージェントの導入が急速に拡大するなか、米Microsoftは、社内エージェントがもたらす内部脅威(Agentic Insider)に対処する包括的なセキュリティ機能を発表した。
従来、企業は自社で配備したAIエージェントを暗黙的に信頼し、重要システムやデータへの過剰な権限(overprivileged)を付与する傾向があった。しかし、最先端のフロンティアモデルであっても完全な信頼は置けない。悪意がなくとも、目標を達成しようとする過程で安全策をすり抜ける「報酬ハッキング(AIが設定された目標を達成するために想定外の抜け道や安全策の迂回を行う現象)」を起こしたり、複数エージェントが結託して予期せぬ行動を取るリスクが浮き彫りとなっている。
これを受け、Microsoftは2026年7月に外部攻撃防御向けに発表した「Project Perception(Microsoftが2026年7月に発表したAI主導型サイバー防御システム)」のサイバースタックを社内エージェントの統制へと拡張。全エージェントの行動を24時間監視・調停する「Guardian Agents(AIエージェントの全行動をリアルタイムに事前監視・調停する防御用AI)」の導入を明らかにした。

本システムは、確率的・非決定論的に振る舞うAIモデルに対し、決定論的(確実)なセキュリティ境界を適用する設計となっている。具体的には以下の3層で構成される。
Microsoftのセキュリティ責任者であるHayete Gallot氏は、「AIエージェントによるセキュリティが防御の速度をもたらし、セキュリティ実務者が最終的な判断を下す」と述べ、追跡可能性(トレーサビリティ)の確保を重視する姿勢を強調した。
Microsoft公式発表および技術報道(Unite.AI等)を総合すると、本機能はMicrosoft 365 E7およびAgent 365のセキュリティ拡張として提供され、現場の多様なエージェントを網羅する設計となっている。
| 防御レイヤー | 役割と提供機能 | 具体的制御内容 |
|---|---|---|
| エージェント検知 | センサー統合による自動検出 | Claude CodeやGitHub Copilotなど60種のローカルエージェントに対応 |
| ID・権限管理 | Entra Agent IDと動的権限 | 人間とエージェントの権限分離、権限ゼロから開始する時限タスク認可 |
| 実行環境分離 | 隔離サンドボックス(MXC) | エージェントの制御バイパスを防止する不可侵境界の形成 |
| 動的認可制御 | Dynamic Conditional Access | リスク上昇時に書き込み遮断や暗号検証付き人間承認を要求 |
| 常時調停 | Guardian Agents | 24時間365日の事前介入、最高リスク時はプロセスの即時停止・隔離 |
一方で未確認事項として、モデルの「思考過程(思考トークン(AIモデルが結論に至るまでの推論ステップを記録したトークン))」を直接解析して意図の逸脱を検出する構想は次期ステップと位置づけられており、初期リリースにおける検出精度の範囲や、サードパーティ製外部モデルへの適用可能性については今後の検証が必要となる。
社内AIエージェントを「潜在的な内部脅威(Agentic Insider)」として位置づけた今回の発表は、企業のセキュリティ戦略に大きな転換を迫るものだ。
従来のサイバー防御は「外部からの不正侵入の阻止」に主眼が置かれていたが、業務権限を持つ自律エージェントが社内で増殖する環境では、社内の全主体を検証対象とする「ゼロトラスト(社内外を問わずすべてのアクセスを信用せず常に検証するセキュリティ概念)」の原則をAI自身にも適用せざるを得ない。Satya Nadella CEOが「最も信頼できるシステムとは、モデルを最も信頼しなくて済むよう設計されたシステムである」と指摘した通り、モデルそのものの善意に頼らず、外側から決定論的な制御レールを敷くアプローチが今後の企業向けAI運用の標準になるとみられる。