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Microsoftは2026年10月13日、年次のサイバーセキュリティ報告書「Microsoft Digital Defense Report 2026(Microsoftが毎年公表するサイバー脅威の動向分析レポート)」の内容を、アジア向けニュースサイト「Source Asia」でインドネシアの状況と合わせて解説しました。AIの普及で攻撃が速く・大規模になり、IDや相互につながったシステムが狙われているという分析で、企業の経営層やセキュリティ担当者に対し「防ぐ」だけでなく「止まらずに事業を続ける」備えを求める内容です。

発表によると、報告書は2025年7月から2026年6月までの観測結果に基づいています。攻撃者の手口や標的そのものは大きく変わっていない一方、AIと相互接続の進んだデジタルシステムによって、攻撃がより速く、規模を拡大しやすく、効果的になっていると分析しています。同社が挙げた4つの潮流は次のとおりです。
| 潮流 | 発表の要点 |
|---|---|
| AIが攻撃を加速し、新たなリスクも生む | 攻撃者はAIで脆弱性の発見、マルウェアの生成、フィッシングやオンライン詐欺を大規模に行っている。同時にAIシステム自体や、それを支えるデータ・インフラも標的になっている |
| デジタルIDが侵入口に | ユーザーアカウントや認証情報を狙って不正アクセスし、そこから別のシステムやデータへ到達する |
| 相互接続されたソフトウェアとインフラを通じたリスク拡散 | オープンソースソフトウェア、エッジデバイス、クラウドのID、工場設備などの制御系技術への攻撃が増加。1つの脆弱性がソフトウェアサプライチェーン(部品・依存関係の連鎖)などを通じて複数の組織に影響しうる |
| サイバーレジリエンスは経営の責任に | 攻撃のペースが速く、予防だけでなく障害時にも重要なシステムを動かし続ける備えが必要。IT部門だけでなく経営層の優先課題になっている |
これらの傾向は、同社の脅威分析部門「Microsoft Threat Intelligence」のデータにも表れているといいます。発表で示された世界全体の数値は以下のとおりです。
同社は、AIによって高度な攻撃者が従来は数日かかった一連の攻撃手順を数秒に短縮できる場合もあると指摘しています。一方で、AIは脆弱性の特定、脅威の検知、調査の迅速化、対応の自動化など防御側にも機会をもたらすとし、人間のセキュリティ専門家がAIと協働する重要性も強調しました。
今回の発表はインドネシア向けに構成されており、同国は観測期間中に顧客が脅威活動の影響を受けた頻度が高い国として、世界で24位、アジア太平洋で10位だったとしています。
あわせて、インドネシアの国家サイバー暗号庁(BSSN)のデータを現地メディアMedia Indonesiaの報道経由で引用し、同国の潜在的なサイバー脅威が2025年に2019〜2024年と比べて700%超増加(毎秒約174件)、2026年10月までに約31億3,000万件(平均毎秒133件)が記録されたと紹介しています。なお、これらはMicrosoftの観測ではなくBSSNの集計値であり、報告書本体の数値とは出所が異なる点に注意が必要です。
Microsoftインドネシアのマネージングディレクター、Gunawan Susanto氏は次のようにコメントしています。
AIが急速に進化する中、サイバーセキュリティは単なる防御ではありません。組織が自信を持ってイノベーションを進め、AIを導入するための不可欠な基盤です。
発表は、インドネシアの組織がデジタルレジリエンスを高めるための5つの優先事項を挙げています。内容は特定の国に限らず適用しやすいものです。
| 優先事項 | 具体策 |
|---|---|
| サイバーセキュリティとID保護を優先 | 経営判断にセキュリティを組み込み、パスキー(パスワードの代わりに端末の認証で本人確認する仕組み)やフィッシング耐性のある多要素認証、最小権限アクセスで認証情報の悪用リスクを減らす |
| AIとデータのガバナンス強化 | 正式に承認されていないものも含め、AIアプリやエージェントの利用状況を把握・管理する。機密データを保護し、権限に応じたアクセス制御を行う |
| インターネットに面したシステムの露出を減らす | 公開状態の資産を洗い出し、ネットワーク機器の更新を優先し、認証と監視を強化する |
| 備えのテストとソフトウェア依存関係の保護 | クラウドサービスや業務アプリで定期的に攻撃シミュレーションを行い、信頼できる入手元のソフトを使い、構成要素と依存関係を監視する |
| 協力体制と長期的な備え | 信頼できるパートナーや当局と脅威情報を共有する。利用している暗号方式の棚卸しと耐量子暗号(量子コンピューターでも解読されにくい暗号方式)への移行計画をAIガバナンスと並行して進める |
今回のSource Asiaの記事はインドネシア向けの解説で、日本の順位や国内の被害状況は示されていません。日本に関するデータを確認するには、報告書本体を参照する必要があります。
一方、5つの優先対策のうち「承認されていないAIアプリやエージェントの把握」は、社員が個人判断で生成AIを使う状況が広がる日本企業にもそのまま当てはまる論点です。
編集部注: 4つの潮流のうち、AIが「攻撃の道具」であると同時に「攻撃の標的」にもなっていると明記した点は、今年の報告書の特徴とみられます。優先対策にもAIアプリ・エージェントの可視化が独立した項目として入っており、AIの利用管理が従来のID保護やパッチ適用と並ぶ基本対策として扱われ始めていることがうかがえます。初期侵入の73.3%が人やアカウントの悪用に関係するという数値は、技術的な防御だけでなく、認証方式の見直しや従業員教育の比重が依然大きいことを示す根拠になっています。
引用元:Source Asia