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米非営利AI研究機関のAi2(Allen Institute for AI、AI技術のオープンな発展を目指す研究所)は、自組織で運用する数千基規模のGPUクラスタに向け、研究価値の高いジョブを優先しながら高稼働率を維持する新たなスケジューリングシステムを導入し、その実践成果を技術ブログで報告しました。従来の優先度方式で発生していたリソースの奪い合いを解決するため、組織の階層に応じたGPU時間の予算管理とタイムスライシング契約を導入した結果、クラスタ占有率98%を維持したまま、デバッグ用ジョブの待ち時間を大幅に短縮することに成功しました。

Ai2のAIインフラチームは、88基から1024基規模で構成されるNVIDIAの「H100」「B200」「B300」GPUクラスタを運用し、約150人の内部研究者による大規模分散学習を支えています。GPU需要は供給の2倍から3倍に達しており、常に激しい計算資源の競合が発生していました。
旧来の優先度ベースのスケジューラでは、以下の課題が生じていました。
この「共有地の悲劇」を解消するため、Ai2は静的な優先順位付けを撤廃し、経済的なアプローチを取り入れました。

新システムの中核は、研究マネジメントの戦略をそのまま計算資源配分に反映する階層構造です。
30日間の本番運用検証において、クラスタの占有率は改修前後で98%の高水準を維持しました。全提供GPU時間の18%は予算外の空き枠(Unallocated)として割り当てられ、急なバースト需要や未計画枠の回収に役立てられています。
| 評価項目 | 従来の優先度方式 | 新スケジューリング方式 | 改善効果 |
|---|---|---|---|
| デバッグジョブp90待機時間 | 約2時間 | 30秒 | 大幅な短縮 |
| 最大H100クラスタ中央値待機時間 | 5分 | 24秒 | 約12倍の高速化 |
| 最大H100クラスタp90待機時間 | 2.8時間 | 1.8時間 | 約35%削減 |
| 割り当て目標の履行率 | 不均等・形骸化 | **98%**(15チーム中13チームが95%以上) | 配分の公平性を担保 |
| 人手介入を要したホスト障害修復 | 頻繁な手動調整 | 74%削減 | 運用保守の負担を大幅軽減 |
短時間のデバッグジョブが1分未満で起動できるようになったことで、GPUスワッティングを行う動機が根本から解消されました。また、障害が発生したノードでもジョブの最低実行時間満了に伴って自動的にワークロードが退避されるため、保守運用の自動化が進展しました。
新システムの導入によって多くの指標が改善した一方、以下のような新たな運用課題も明らかになっています。
大規模言語モデル(LLM)やマルチモーダルモデル(VLM)の事前学習・事後学習において、数千基規模のGPUクラスタをいかに無駄なく、かつ研究優先度に沿って稼働させるかは、先端AI開発組織における最重要課題の一つです。
Ai2の取り組みは、単なるキューイング技術の改善にとどまらず、計算資源の配分権限を現場の運用折衝から組織経営的な予算配分へと昇華させた点に大きな意義があります。HadoopやSLURMで培われた古典的なフェアシェア技術を現代のGPU需要に適合させ、タイムスライシング契約によって運用の自動化率を高めた実践知見は、独自の計算基盤を抱えるAI研究開発機関や企業インフラチームにとって極めて実践的なモデルケースとなります。
引用元:Hugging Face