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米Googleは長期研究計画「Project Suncatcher」において、自社開発のAI半導体「TPU(Tensor Processing Unit。Googleが開発するAI処理専用のアクセラレータ)」を搭載した初の試作衛星を地球低軌道へ投入し、宇宙環境での実証試験を開始した。衛星を共同開発した米Planet(プラネット)とともに初期通信を確認しており、約1年間にわたり放射線耐性や熱管理、AI推論処理の動作検証を行う。

今回の試作衛星は、米カリフォルニア州バンデンバーグ宇宙軍基地から米SpaceXのFalcon 9による相乗りミッション「Transporter-18」で打ち上げられた(日本時間2026年10月2日未明)。機体は冷蔵庫ほどの大きさで、地上データセンターで使用されている「Trillium」世代のTPUを4基搭載している。
Googleの計画責任者であるトラビス・ビールズ氏は、衛星との通信確立と機体の正常動作を発表した。打ち上げに合わせて、関連研究の査読済み論文が学術誌『Joule』で公開されている。
軌道上での試験は主に以下の3点に焦点を当てて進められる。
宇宙空間を計算基盤として活用するアプローチはGoogle以外にも拡大しており、各社の設計思想や規模には明確な差異が見られる。
| 開発主体 | 衛星・計画名 | 搭載AIチップ | 衛星あたり消費電力 | 構想規模・特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Google / Planet | Project Suncatcher | Trillium TPU ×4 | 約1kW | 太陽同期軌道・1.6Tbps光通信による群制御 |
| SpaceX / NVIDIA | Starmind AI1 | Vera Rubin NVL72基幹 | 平均175kW(最大250kW) | FCCへ最大100万機を申請・2027年配備目標 |
| Starcloud | 軌道上計算実証機 | NVIDIA H100 | 数kW規模 | 2025年に小規模言語モデル訓練を実証 |
Googleが示した構想では、常に日光を受けられる太陽同期軌道を活用することで地上同等設備の最大8倍の電力を得られると試算している。2027年にはPlanetと共同で2機の衛星間を光通信(双方向1.6Tbps)で結ぶ軌道上リンク試験を計画している。
ただし、商用採算性の成立には高いハードルが存在する。Googleの論文では、打ち上げ費用が2030年代半ばに1kgあたり200ドル未満(SpaceX Starshipなどで年約180回の打ち上げ)に達することを前提としており、現時点では施設全体の採算性が実証されたわけではない。また、将来的な衛星群の密集に伴うスペースデブリとの衝突リスクや天文観測への光害といった環境課題も指摘されている。
今回の打ち上げは、地上のデータセンターが直面している膨大な電力消費、送電網の容量不足、冷却水確保といった物理的制約に対する、極めて野心的な長期的布石と評価できる。
現行の1kW級の試作衛星は大規模なLLM学習を担うものではなく、宇宙の過酷な熱・放射線環境で最新のアクセラレータがどこまで耐えうるかを調べる基礎検証にとどまる。しかし、地上でのギガワット級AIデータセンター新設が環境・インフラ両面で困難さを増す中、宇宙空間の無尽蔵な太陽エネルギーを活用する分散コンピューティングの研究は、2030年代の次世代AI基盤を見据えた重要なマイルストーンとなる。
引用元:財経新聞