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米NVIDIAは、同社のGPU向け並列コンピューティングプラットフォーム「CUDA Toolkit(NVIDIAのGPUコンピューティング向け開発環境) 13.4」において、芝浦工業大学システム理工学部の尾崎克久教授らが開発した高速・高精度計算アルゴリズム「Ozaki Scheme II(尾崎スキームII)」を正式採用しました。AI用途で飛躍的に強化されてきたGPUの低精度演算器(Tensorコア等)を複数回組み合わせて活用することで、物理シミュレーションなどの科学技術計算で不可欠となるFP64(倍精度浮動小数点演算。科学技術計算で高い精度が求められる)相当の計算をハードウェア改変なしに大幅に高速化します。

近年のAI向けGPUアーキテクチャでは、深層学習の需要に合わせてFP8やFP16といった低精度演算性能が極限まで引き上げられる一方、シリコン面積の制約からFP64(倍精度)演算器の搭載比率は相対的に抑えられる傾向にありました。
尾崎スキームは、低精度演算器を用いて行列演算を分割実行し、得られた部分的な結果を補正・合成することで、FP64と数学的に同等の精度を持つ演算結果を導き出すエミュレーション手法です。
| 方式 | 発表・採用年 | 主な特徴と演算方式 | 適用対象・ライブラリ |
|---|---|---|---|
| Ozaki Scheme I | 2012年発表 / 2025年採用 | 浮動小数点分割による高精度化 | NVIDIA cuBLASに採用済み |
| Ozaki Scheme II | 今回(CUDA 13.4で導入) | 整数の剰余を利用した新方式 | ワークロードに応じて自動選択 |
NVIDIAの公開データによると、Ozaki Scheme IIはAmpere世代以降のGPUアーキテクチャに対応しています。最新世代のBlackwell「B200」においては、実数の倍精度行列積で最大175TFLOPS、複素数行列積では最大295TFLOPSという驚異的なスループットを達成しました。さらに次世代アーキテクチャ「Rubin」への対応も表明されており、CUDA 13.4では開発者向けプレビューとして提供されます。
今回の採用は、日本の大学研究室で生み出された数理アルゴリズムが、世界中のAIインフラを支えるNVIDIAの標準ソフトウェアスタック中核へ組み込まれた極めて重要なマイルストーンです。
生成AIブームにより、先端半導体の開発投資と製造キャパシティはAI特化型チップに集中しています。これにより、天文学、気象予測、創薬、材料力学といった伝統的な科学技術計算コミュニティが「高価な倍精度専用アクセラレータを入手しづらくなる」という課題に直面していました。尾崎スキームのCUDA標準搭載は、AI向け低精度シリコンの圧倒的な演算能力をソフトウェア技術によって科学計算へ還流させる理想的なブレイクスルーであり、今後のHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)とAIインフラの統合を象徴する動きと言えます。
引用元:マイナビニュース