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中国のIT大手アリババグループ(Alibaba Group Holding)傘下のナビゲーションサービス「高徳地図(中国で広く使われる地図・ナビゲーションアプリ)」(Amap)は、世界初となるネイティブ3D都市世界モデル「ABot-Earth 0.7」を導入し、大規模な機能刷新を発表しました。劇場席やショッピングモール内を立体的に探索できるプレビュー機能や、AIによる超地域特化型の店舗推薦を展開します。月間約10億人の利用者基盤を武器に、生活関連サービス市場で先行する美団(中国で出前や店舗予約などを展開する生活サービス大手)(Meituan)に対抗するとともに、世界モデルや身体性知能(ロボットのように実世界環境で身体を持って行動するAI)(Embodied AI)の実証基盤としての役割を担います。
South China Morning Post(SCMP)によると、今回の技術刷新の中核は「Flying Street View 2.0(フライングストリートビュー2.0)」です。ABot-Earth 0.7によって駆動され、利用者は目的地の劇場内の座席からの見え方や大型商業施設の内部構造を、インタラクティブな3D空間で事前に確認できます。
高徳地図の郭寧(Guo Ning)最高経営責任者(CEO)は発表イベントで「大規模言語モデルがテキスト処理を支援するものなら、高徳地図の空間知能(Spatial Intelligence)は人々が世界をより良く探索することを助ける」と述べました。
また、AI推薦機能「Street Stars(街星)」の展開から1年が経過し、中国国内269都市で地域住民に支持される店舗ガイドを提供しています。人流や移動パターン、認証済みレビューなどの大量データをAIが解析し、タクシー運転手が通う飲食店などのランキングを提示。同社の開示データによると、2025年リストに掲載された店舗の注文数は前年比平均424%急増し、推薦枠の上位店舗では159%の売上増を記録したとされています。
中国のローカル生活サービスにおける高徳地図と美団の動向および相違点は以下の通りです。
| 項目 | 高徳地図(Amap / アリババ) | 美団(Meituan) |
|---|---|---|
| 月間アクティブ利用者数(MAU) | 約9億9,600万人(2026年1月開示) | 約5億1,200万人(QuestMobileの2026年5月調査) |
| 中核となる技術的アプローチ | 3D世界モデル(ABot-Earth)による空間知能 | 飲食クーポンや配送網に直結した取引ファネル |
| ロボティクス・実世界応用 | 実世界シミュレーション「FantasyWorld」、ABotシステム | 自動配送車・ドローンによる即時配達網 |
| 海外展開の動向 | シンガポール政府観光局と提携し初展開 | 香港や中東地域への出前サービス進出 |
一方で、中国企業資本連合(CECU)のチーフエコノミスト白文喜氏は、高徳地図が抱える課題として「取引完了までの導線の不完全さ」を指摘しています。地図上で優れた飲食店を発見した利用者でも、共同購入の割引クーポンを購入・使用するために美団のアプリへ移動してしまう傾向があり、高徳地図自体が決済や購買を完結させる設計を最優先にしていない点が市場シェア獲得の壁となっています。
また、シンガポール政府観光局と共同で立ち上げた「Singapore Street Stars」(104箇所の観光・生活スポットを7テーマで格付け)など海外展開も始まっていますが、中国国外で同様の3D空間知能データ基盤をどの程度構築できるかは未確認です。
編集部注: アリババは2014年に高徳地図を買収して以来、単なる地図アプリにとどまらず、グループ全体のAIおよび身体性知能のインキュベーターとして位置づけています。同社は7月にロボットの運動神経や中枢神経を統合するアーキテクチャ「ABot」を公開しており、実世界の3D空間モデルとナビゲーションデータの蓄積は、将来の自動運転やヒューマノイドロボットの知能基盤に直結します。
生活サービス市場における美団との競争は、単なる店舗予約の奪い合いではなく、利用者の実世界行動データを自律型AIやロボティクスへフィードバックするプラットフォーム争奪戦へと変貌しつつあります。