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米NVIDIA(GPUやAI向け半導体を開発する米大手テクノロジー企業)は2026年9月23日(現地時間)、シンガポールで開催された年次イベント「NVIDIA AI Day Singapore」において、東南アジア諸国連合(ASEAN)全域に向けたAI導入・実用化の加速策を発表した。オープンモデル「NVIDIA Nemotron(NVIDIAが提供するオープンな基盤モデルファミリー)」を活用した各国政府機関・現地企業の独自AI開発支援をはじめ、東南アジアのテクノロジー企業Sea Limitedによる次世代コンピューティング基盤「NVIDIA Vera Rubin(NVIDIAの次世代データセンター向けGPUプラットフォーム)」のASEAN初採用など、地域特化型AIインフラの構築を多角的に進める。
シンガポールの政府機関であるHTX(内務チーム科学技術庁)は、「Nemotron 3 Super」およびマルチモーダル対応の「Nemotron 3 Nano Omni」を採用した公共安全向けAI研究に着手した。複雑な推論やエージェント型ワークフロー(自律的にタスクを遂行する処理手順)の検証に加え、画像・音声・言語を統合した運用データの解析を進める。
また、ITサービス大手のNCSは動画検索・要約向けブループリント(推奨アーキテクチャ)を活用し、企業・公共機関向けエージェント型AIや人型ロボット向けフィジカルAIの開発を推進している。地域各国でも展開が加速しており、マレーシアのYTL AI LabsやベトナムのViettel AIが現地語向けにNemotronのファインチューニングを実施。タイではBig Data InstituteとiApp Technologyが「OpenThai 2.0 Legal」を開発し、法律相談AIチャットボット「Thanoy」の基盤として約4万3,000人の利用者に提供している。

シンガポール発祥のグローバル企業であるSea Limitedは、ASEAN地域で初となる「NVIDIA Vera Rubin」プラットフォームの導入を発表した。同社はECサイト「Shopee」、デジタル金融「Monee」、ゲーム部門「Garena」を展開しており、Vera Rubinの高度な演算能力を活用して大規模なAIモデルや自律型エージェントの配備を強化する。
Shopeeでは出品者向けの商品登録支援や商品検索の精度向上にAIを活用し、中小事業者の業務効率化を後押しする。またMoneeでは不正検知や信用リスク評価にAIを適用し、安全なデジタル金融サービスの普及を進める。

東南アジア市場におけるAI基盤の整備が進むことで、同地域に進出している日本企業や越境EC事業者は、現地言語や商習慣に適合した高精度なAIサービスを利用しやすい環境が整う。特にShopeeをはじめとする主要プラットフォームでのAI自動化機能の拡充は、日本製品を東南アジアへ展開する事業者のマーケティングや出品運用コストの低減につながる。
今回の発表において明らかにされていない留意点は以下の通りである。
| 項目 | 発表済みの内容 | 未確認・留意すべき点 |
|---|---|---|
| Vera Rubinの稼働時期 | Sea LimitedがASEANで初採用 | データセンターへの具体的な配備完了時期および運用開始スケジュール |
| モデルのライセンス条件 | Nemotronオープンモデルを提供 | 各国パートナーがカスタマイズした派生モデルの外部公開範囲や商用利用規定 |
| インフラ提供の規模 | 各国でのGPUクラウドやデータセンター連携 | 各国ごとの提供GPUクラスタ規模や消費電力・調達体制の詳細 |
NVIDIAによる今回の施策は、主権AI(Sovereign AI:自国のデータ・文化・言語に基づき自国でAIインフラやモデルを保有する概念)の確立を目指す各国政府の需要を取り込み、東南アジア市場におけるエコシステムを早期に掌握する狙いがあるとみられる。米中対立による規制環境のなかで、急成長する東南アジア地域を戦略的拠点と位置づけ、ハードウェアの供給にとどまらずオープンモデルや学習レシピの提供を通じて現地開発者を囲い込む戦略が鮮明となっている。
引用元:NVIDIA Blog