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米連邦議会のサム・リッカルド下院議員(民主党・カリフォルニア州)とケビン・カイリー下院議員(無所属・カリフォルニア州)は2026年9月22日(現地時間)、フロンティアAIの破滅的リスクを防止するため、米国と中国の間で安全性協調の制度的枠組みを構築する超党派法案を発表した。冷戦時代の核危機管理を引き合いに出し、重大インシデント発生時の緊急ホットライン(赤電話)の設置や、拘束力のある二国間安全基準の交渉を政府に義務付ける内容となっている。
法案は、政治的合意に先立って両国の研究機関による技術的対話を可能にする「2トラック構造」を採用している。
第1のトラックでは、米国務省および政権に対し、モデルの第三者監査、透明性基準、重大インシデント報告、検証メカニズムを含む拘束力のある安全協定の締結に向けた対中交渉を指示する。また、重大事故や緊急時に米中両国政府が即座に連絡を取るための直通ホットライン(AI版「赤電話」)の創設を盛り込んだ。
第2のトラックでは、米国のAI研究所、大学、企業の研究者が中国の専門家と安全基準について直接議論できるよう法的障壁を緩和する。ただし知的財産の保護を重視し、国務省への事前登録や政府職員の立ち会いを義務付けるとともに、モデル蒸留や防衛・サイバー分野の機密データの共有は厳格に禁止されている。
法案が提示する主要な柱とリスク管理の対象領域は以下の通りである。
| 規定項目 | 主な内容・要件 | 目的・保護対象 |
|---|---|---|
| 破滅的リスクの特定 | 制御喪失、アライメント失敗、CBRN(化学・生物・放射性・核)脅威、重大サイバー攻撃 | 国家安全保障および人類存続リスクの回避 |
| 緊急ホットライン | 米中政府間の即時緊急通信回線の設置 | 誤認や偶発的なAI危機連鎖の防止 |
| 基準開発予算 | CAISI(AI標準イノベーションセンター)へ1億ドル授権 | 客観的かつ共通の評価・テスト指標策定 |
| 専門家対話の統制 | 国務省登録・立ち会い義務、知財提供禁止 | モデル蒸留による技術流出防止と対話の両立 |
| 議会監督 | 国務省および商務省による月次進捗報告 | 超党派での履行状況監視 |
日本にとっても、米中二大国がAIの安全性基準に関して合意を形成できるかは、国際的なAIガバナンス(広島AIプロセス等)の実効性に直結する。特に化学・生物兵器へのAI悪用や自律的サイバー攻撃の防止基準が二国間で具体化すれば、グローバルなモデル開発基準や輸出入管理のデファクトスタンダードとなる可能性がある。
一方で、対中強硬派が根強い米議会において本法案が可決・成立するかどうか、また中国政府側がこうした検証メカニズムや拘束力ある査察を受け入れるかについては現時点で不透明である。
米中間の地政学的対立が深まる中でも、AIの制御喪失や生物兵器転用といった壊滅的リスクは、冷戦期の核兵器と同様に「勝者のいない破滅」をもたらすという危機感が米議会内で共有されつつある。技術的な「レッドライン(越えてはならない一線)」を事前に共有しておくことで偶発的衝突を防ぐという現実主義的アプローチは、今後の先端技術外交における新たな基軸となる可能性がある。