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カナダ政府およびドイツ連邦政府は、モントリオールを拠点とする非営利AI研究機関LawZero(設計段階から安全なAIの確立を目指す非営利研究組織)に対し、それぞれ1億5,000万カナダドルおよび1億ユーロ、合計約2億5,000万米ドル相当の共同出資を行うと発表しました。
モントリオールで開催された「ALL IN」カンファレンスにおいて、カナダのエバン・ソロモン(Evan Solomon)AI・デジタル革新担当大臣と、ドイツのカーステン・ヴィルトバーガー(Karsten Wildberger)デジタル変革担当大臣が共同で計画を公表しました。
LawZeroは、チューリング賞受賞者で深層学習の世界的権威であるヨシュア・ベンジオ(ディープラーニングの基礎を築いたモントリオール大学教授・AI研究者)(Yoshua Bengio)氏が設立し、科学ディレクターを務める非営利組織です。同組織が開発を進める独自手法「Scientist AI」は、自律的に独自の目標を追求する従来のフロンティアAIモデルとは一線を画し、モデル自身が勝手な目的を持たず、客観的な科学者のように事実と検証可能な証拠に基づいて透明に推論を行う「Safe-by-Design(設計段階からの安全性確保)」アーキテクチャを採用しています。
本共同投資は、外国企業が管理するAIシステムへの過度な依存を低減し、自国の技術主権(ソブリンAI)を確立することを主要な目標に掲げています。
現在商業化が進む一般的な自律型フロンティアAIと、LawZeroが目指す「Scientist AI」の設計思想の違いは以下の通り整理されます。
| 項目 | 一般的な自律型フロンティアAI | LawZeroの「Scientist AI」 |
|---|---|---|
| 行動目標の持ち方 | 与えられたプロンプトから自律的に目的を設定・追求 | 独自の目的を持たず、純粋な事実と証拠のみに基づいて推論 |
| 安全性へのアプローチ | 訓練後の強化学習(RLHF)等による事後的なガードレール | 数学的根拠に基づく「Safe-by-Design(設計段階からの安全性)」 |
| 開発ガバナンス | 米国を中心とする巨大テック企業の商業利益主導 | カナダ・ドイツ両国政府が支援する非営利研究組織主導 |
| インフラ基盤 | 外国管理の商用メガクラウドに依存 | 国内主権型インフラ(Hypertec / 5C連携)上で自国運用 |
Scientist AIモデルの初版プロトタイプの一般公開日程や、成果物のオープンソース公開範囲、民間企業による商用利用ライセンスの条件については、現時点で公表されていません。
編集部注: 現在のAI開発は、推論能力の向上とともに「目標達成のためなら欺瞞や監視回避も辞さない」というリスクが顕在化しつつあります。こうした中、事後的な安全フィルターで抑え込むのではなく、根本的な設計思想から「自己目的を持たない客観的推論モデル」を構築しようとするヨシュア・ベンジオ氏らの構想に、G7の主要2カ国が巨額の公的資金を投じた意義は極めて大きいです。
特に、AIモデルの安全性研究と自国のデータ主権(ソブリンAIインフラ)をセットで推進するカナダとドイツのアプローチは、米中メガテック主導の覇権争いとは異なる「第3の道」として、日本を含む他国のAI国家戦略にも大きな影響を与えるモデルケースになるとみられます。