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米Anthropicが開発中のセキュリティ特化型AIモデル「Claude Mythos Preview(Anthropicが開発中のセキュリティ脆弱性分析・検証特化モデル)」がオープンソースソフトウェア(OSS)から検出した2万3,019件の脆弱性候補のうち、外部のセキュリティ専門家によって精査されたのはわずか1,900件(約8.3%)にとどまることが判明した。米セキュリティ企業Echoの調査データをHelp Net Securityが報じた。確認された案件では高い的中率を示した一方、重大度(Severity)の過大評価が多発しており、AIによる脆弱性自動検出における運用上のボトルネックが浮き彫りとなっている。

報道によると、Anthropicは281件のオープンソースプロジェクトを対象にClaude Mythos Previewを適用し、計23,019件の潜在的脆弱性を抽出した。
このうち外部セキュリティ企業が実際に内容を確認したのは1,900件で、そのうち1,726件(90.8%)が真正な脆弱性として立証された。OSSメンテナー側には1,596件が報告され、1,451件が受領確認、97件の修正パッチがマージされ、88件がセキュリティアドバイザリとして正式公開されている(2026年5月22日時点の集計)。
しかし、残る21,119件の脆弱性候補は、Anthropic外部の人間による精査を一切受けていない。Anthropic側もこの状況について、検証作業を担うセキュリティ専門家の人手不足が原因であると説明している。ただしEcho社は、外部レビューに回された1,900件は最も確度の高い上位候補が選別された可能性が高く、残る2万1,000件の未検証候補全体が90.8%の精度を保っているかは不明であると注記している。
本調査が指摘するもう一つの重大な課題は、AIモデルによる「危険度の過大評価(Overstatement)」である。
セキュリティアドバイザリとして公開された88件のうち、共通脆弱性識別子(CVE)が正式付与された27件について、Mythosの初期評価と人間(独立したCVSSスコアリングおよびOSSメンテナー)の確定評価を比較すると大きな乖離が見られた。
| 重大度(Severity) | Mythosによる事前判定 | 人間(メンテナー・独立評価)の確定判定 |
|---|---|---|
| Critical(緊急) | 8件 | 1件(7件が格下げ) |
| High(高) | 15件 | 16件 |
| Medium(中) | 4件 | 8件 |
| Low(低) | 0件 | 2件 |
27件中14件で重大度の不一致が生じ、そのうち13件で危険度が過大評価されていた。例えばTemporal Serverの事例では、Mythosは「異なる名前空間にまたがるワークフローの乗っ取り」として最上位のCriticalを付けたが、悪用にはすでに高い内部認証権限を持つ名前空間が必要であることから、メンテナーはスコア2.3の「Low」に格下げした。MinIOの事例でも、root JWTの事前取得が必要な読み取り専用欠陥であったため、Criticalから「Medium」へと引き下げられた。
一方、脆弱性をもとに攻撃実証コードを作成する能力においては、前世代モデルから飛躍的な進化が確認されている。Firefox 147のJavaScriptエンジン(SpiderMonkey)の既知クラッシュ50件を用いた計250試行のベンチマークにおいて、Claude Mythos Previewは181試行(72.4%)で任意のコード実行(RCE)エクスプロイトの生成に成功した。前世代のClaude Opus 4.6(Anthropicの前世代最上位フロンティアモデル)の成功率が1%未満(2試行)にとどまっていたことと比較すると、約90倍の跳躍となる。
Echoが2026年7月に米国のシニアセキュリティ責任者80人以上を対象に実施した意識調査では、回答者の37%が「修復能力を超える脆弱性の過剰検知」をサプライチェーン防衛における最大の障壁に挙げている。
AIの推論コスト低下に伴い、数千ドル未満の費用で高度な脆弱性やエクスプロイトを発見できる環境が整いつつある。しかし、ソースコード単体からは実際の稼働環境におけるアクセス制御や権限境界を読み取ることが難しく、AIが「緊急」と誤認した大量のアラートが押し寄せることで、セキュリティ対応チームの疲弊とトリアージ遅延を招くリスクが顕在化している。
AIを用いたサイバー防御を真に機能させるためには、単なる検知件数の最大化ではなく、実際のデプロイ環境を踏まえた正確なリスク優先順位付けと、人間による検証負荷を軽減する包括的な自動修復フレームワークの確立が求められている。