AI関連の最新ニュースをピックアップ
米Google Research(Googleの先進科学技術・人工知能研究部門)とハワード・ヒューズ医学研究所(HHMI Janelia(米国ハワード・ヒューズ医学研究所の先端神経科学研究拠点))の研究チームは2026年9月4日、成体雄(オス)のショウジョウバエにおける脳および中枢神経系の全神経接続マップ(コネクトーム(神経系を構成する全ニューロンとシナプスの完全な接続構造マップ))を世界で初めて完成させ、その詳細データを公開した。本成果は先行して公開された雌(メス)の脳マップに続くもので、AI技術を活用して数百万枚の電子顕微鏡スライス画像から16万6,000個超のニューロンと約1万1,700種に及ぶ神経細胞の3次元配線を精密に復元した。

ショウジョウバエは生物学・神経科学における極めて重要なモデル生物であり、ヒトと同様に頭部の感覚器官で受け取った刺激を運動ニューロンへ伝えて行動を制御する。今回の研究では、脳だけでなく脊椎動物の脊髄に相当する腹側神経索(昆虫の中枢神経系の一部で運動制御を担う神経束)までを含めた中枢神経系全体が対象となった。

本データによって、これまで解明が難しかった性差に伴う神経回路の違いが明らかになった。
| 神経細胞の結合区分 | 特徴と接続挙動 |
|---|---|
| 同型(isomorphic) | 雄と雌の間で同一の構造と接続関係を保持するニューロン群。大部分のニューロンがここに該当する |
| 性特異的(sex-specific) | 雄または雌のどちらか一方のみに存在する神経細胞群 |
| 二型性(dimorphic) | 雄と雌の双方に存在するものの、周囲で接続する隣接ニューロンが性別によって異なる細胞群 |
発表では、感覚・味覚入力を担う神経細胞「AOTU012」を例示。このペア細胞は雄と雌の双方に存在するが、結合相手となる周囲の神経細胞には共通するものと性差を持つものが混在していることが実証された。また、視覚入力(R1-R6ニューロン)から求愛行動に関与する「LoVP92」を経由して運動出力(DNg13ニューロン)へ至る視覚運動経路も詳細に追跡された。
本マッピング成果と連携し、視覚系、味覚処理、社会行動のそれぞれに関する3本の研究論文が『Cell』誌および『Current Biology』誌に同時掲載された。
本研究における意義と未確認事項は以下の通りである。
Google Researchは、今回の成果を通過点と位置づけ、脊椎動物全体の脳配線図作成を目指した研究を継続している。AIによる自動セグメンテーションと神経細胞分類がなければ、数十年を要したはずの作業が大幅に短縮された。生命科学と情報科学の融合は、将来における神経疾患の病理解明や、脳構造に着想を得た新たなAIアーキテクチャの創出にも大きく寄与すると期待される。
引用元:Google