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AIスタートアップの米Anthropic(安全性重視のAIモデルClaudeを開発する米スタートアップ)が、米GoogleでTPU(Googleが開発した機械学習・AI処理専用のアクセラレータ(Tensor Processing Unit))の開発チームを立ち上げ「TPUの父」として知られるアミール・サレク(Amir Salek)氏を採用したことが明らかになった。サレク氏はAnthropicのコンピュート(計算基盤)チームに参画し、主力モデル「Claude(Anthropicが開発するフロンティアAIモデルシリーズ)」向けの独自カスタムAI半導体の設計・開発を推進する。
報道によると、サレク氏はAnthropicのコンピュートチームにおいて、ジェームズ・ブラッドベリー(James Bradbury)氏の直属として業務に従事する。サレク氏はAI半導体業界で長年の実績を持つ著名なエンジニアであり、その主な経歴は以下の通りである。
| 期間 | 所属・役職 | 主な実績・担当領域 |
|---|---|---|
| 2005年〜2013年(8年間) | NVIDIA | SoC(CPUやGPUなどの機能を1チップに集積したシステム(System-on-a-Chip))設計チームを統括 |
| 2013年〜2022年(9年間) | Google(副社長/役員) | カスタムシリコングループを創設、第1世代から第7世代までのTPUアーキテクチャ設計・提供を主導 |
| 2026年8月〜 | Anthropic | コンピュートチームにて独自AIアクセラレータの開発を推進 |
サレク氏がGoogle在籍時に立ち上げたTPUプロジェクトは、Googleのデータセンターにおける機械学習ワークロードの中核を担い、現在も大規模AIモデルの学習・推論に活用されている。
Anthropicによる今回の採用は、外部ハードウェアベンダーへの依存を減らし、モデル規模拡大に伴う莫大な計算コストを抑制する戦略的布石とみられる。フロンティアAI各社における独自チップ・インフラ戦略の状況は下表の通りである。
| 企業名 | 主な独自半導体・インフラ戦略 | 狙い・特徴 |
|---|---|---|
| Anthropic | 元TPU統括のSalek氏を招聘し独自チップ開発に着手 | Claude最適化によるNVIDIA依存低減と計算効率化 |
| 自社開発TPU(第1世代〜現行世代)を全面活用 | 学習から推論まで自社データセンターで垂直統合 | |
| OpenAI | 独自推論チップや半導体パートナーシップを模索 | GPU供給不足の回避と長期的な運用コスト削減 |
| Meta | MTIA(自社製AIアクセラレータ)の内製化を推進 | レコメンドおよび生成AI推論の自社ハードウェア移行 |
大手AI開発企業が自社専用チップの開発を急ぐ背景には、NVIDIA製GPUの調達コスト高騰と供給制約がある。自社の大規模言語モデルのアーキテクチャに特化したシリコンを開発することで、汎用GPUよりも電力効率や推論のスループットを大幅に高めることが可能となる。
Anthropicが独自シリコンの開発を進める動きは、将来的にClaudeのAPI提供価格や安定性に直接的な恩恵をもたらす見込みである。現在はAmazon Web Services(AWS)のTrainium/InferentiaやGoogle CloudのTPU、各種クラウドのNVIDIA GPU上でClaudeが稼働しているが、自社最適化チップの導入によって推論効率が向上すれば、日本の企業や開発者にとってもAPI利用料金の低廉化やレイテンシの改善が期待できる。
今回の人事採用において、Anthropicが独自開発するチップの具体的な製造委託先や、テープアウト(設計完了)・実用化の目標時期などは公表されていない。また、最先端半導体の開発には設計から量産まで数年の期間と巨額の投資が必要となるため、短期的なモデル展開には引き続き既存のクラウドパートナーのインフラが活用されるとみられる。
AIモデル開発競争が「モデルのアーキテクチャ」だけでなく「計算インフラのコスト効率」の勝負にシフトするなか、GoogleでTPUを成功させたキーパーソンを獲得した意義は極めて大きい。ソフトウェアとハードウェアを密結合させて最適化を図る垂直統合型のアプローチは、フロンティアAI市場におけるAnthropicの長期的な競争力を左右する重要な転換点となるとみられる。
引用元:Economic Times