AI関連の最新ニュースをピックアップ
Alibabaは8月3日、パラメータ数2.4兆の最新旗艦モデル「Qwen3.8-Max」を投入した。価格は入力100万トークンあたり2ドル、出力6ドル(推論処理分も含む)で、Anthropicの「Claude Opus 5」やOpenAIの「GPT-5.6 Sol」を大きく下回る。米Forbesが8月5日に報じた。AIモデルを業務や開発に使う企業・開発者にとっては、トークン単価の下落が直接コスト削減につながる動きであり、今後の主要AIサービスの価格競争にも影響しうる。
Forbesの報道によると、Qwen3.8-MaxはMoE(複数の専門家サブモデルを切り替えて処理を分担するアーキテクチャ)(疎な混合エキスパート構成)を採用したモデルで、パラメータ総数2.4兆のうち、1回の処理では約950億パラメータのみを稼働させることで応答速度とサーバーコストを抑えているという。テキスト・画像・動画を扱え、コンテキストウィンドウ(一度に読み込める文章量の上限)は100万トークンに達する。クラウドソース型の評価サイト「LMArena」では、公開時点でVision Arena(画像分野)2位、Text Arena(テキスト分野)5位につけたとされる。
Forbesが挙げた100万トークンあたりの価格は以下の通り。
| モデル | 入力価格 | 出力価格 |
|---|---|---|
| Qwen3.8-Max(Alibaba) | $2 | $6 |
| Claude Opus 5(Anthropic) | $5 | $25 |
| GPT-5.6 Sol(OpenAI) | $5 | $30 |
| Claude Sonnet 5(Anthropic、中位モデルの導入価格) | $2 | $10 |
| Kimi K3 | $3 | $15 |
| DeepSeek V4 Flash | $0.14 | $0.28 |
Alibaba自身も、Claude Opus 5と比べて入力価格が約4割、出力価格が約4分の1だとアピールしている。旗艦級と位置づけるモデルが、Anthropicの中位モデルであるClaude Sonnet 5と同じ入力価格に並んだ点が今回のニュースの核心だ。
Forbesは、Alibabaが公開した性能スコアがすべて自社の内部測定であり、公開時点で独立機関による検証は行われていないと指摘している。LMArenaの順位は実際の利用者による人気投票であり、なりすましは難しいものの、能力そのものより好みを反映しやすい指標だという。オープンウェイト(モデルの重みを公開する形態)版は、より小型の270億パラメータ版とともに翌週に公開予定とされるが、記事執筆時点でライセンス条件は未公表とされている。実際の性能や利用条件は、この公開を待って初めて検証できる段階にある。
Forbesは、Alibabaがこの価格を成立させられる背景として、収益の柱がモデル単体ではなくクラウド事業にある点を挙げている。Qwenファミリーはオープンウェイト戦略により累計10億件のダウンロードに達し、Meta「Llama」を上回る最もダウンロードされたオープンモデル群になったという。同社の3月期決算では、Alibaba Cloudの売上が前年比38%増、外部顧客向け売上は40%増となり、AI関連製品は11四半期連続で3桁成長を記録、外部クラウド売上の30%を占めるに至った。経営陣は今後1年程度でAI関連が売上の半分を超えると見込んでいるとされる。
編集部注:Forbesが引用するEpoch AIの調査では、同水準の推論能力を提供するコストは年あたり9倍から900倍(中央値で約50倍)のペースで下落しており、2023年に100万トークンあたり30ドルだった能力は現在1ドル未満で得られるという。この傾向をふまえると、Qwen3.8-Maxの値下げは特異な動きではなく、業界全体で進む価格下落を加速させたものと捉えられる。半導体が安くなるほど用途が広がり業界全体の売上が伸びた過去の例と同様に、トークン単価の下落もAIの利用場面を広げる方向に働く可能性がある。一方で、Amazonが2026年の設備投資額を約2200億ドルに引き上げ、CEOのAndy Jassy氏が2027年まで需要に対して容量が不足すると述べたとForbesは報じており、値下げが利用増を通じてインフラ側の需要をむしろ押し上げる構図もうかがえる。ただし、これらはForbesの分析記事における見立てであり、Anthropic・OpenAI・Googleなど競合する「フロンティア」勢が実際に値下げで応じるかどうかは、記事執筆時点では未確定である。
引用元:Forbes