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Metaの現・元従業員26人が、同社が2026年5月に実施した全従業員の約10%(約8,000人)にあたる大規模人員削減(企業が一度に多数の従業員を解雇する施策。米国法では事前通知義務(WARN Act)などの規制がある)において、AIアルゴリズムが保護休暇の取得者を不当に狙い撃ちしたとして、カリフォルニア州北部地区連邦裁判所に訴訟を提起した。原告は解雇の差し止めと5月20日時点の雇用地位の回復を求めている。
71ページにおよぶ訴状によると、Metaは管理職の判断ではなく、複数の社内AIシステムを組み合わせて解雇対象リストを作成した。具体的には、社内AIアシスタント「Metamate(Meta社内で使用されるAIアシスタントの名称。訴状で解雇選別に関与したと指摘されている)」、従業員が訓練した「セカンドブレイン」エージェント、キーストローク監視(キーボード入力や画面操作を記録・分析する従業員モニタリング手法)・活動監視データ、AIトークン使用状況ダッシュボード、およびアルゴリズム支援による業績ランキングと評価調整が用いられたとされる。
原告26人は全員、過去24ヶ月以内に保護休暇(FMLA(家族・医療休暇法)や妊娠差別禁止法などで法的に保障された休暇。取得を理由とする不利益な扱いは違法とされる)を取得・申請・承認されていた。AIシステムが生産性指標やコード出力量に基づいて評価を行うため、休暇期間中に稼働実績がない従業員は構造的に低スコアとなり、「保護休暇を取得した従業員が不均衡に解雇対象に選ばれた」と訴状は主張している。
訴状はさらに、Metaが2026年初頭に導入した従業員監視プログラムの問題を指摘している。このプログラムは会社支給デバイス上のキーストローク、画面内容、マウス操作、ブラウザ履歴、メッセージ、メール、音声・映像・位置情報を収集していた。収集データはAIツールの構築に利用され、従業員は非任意で新設のエンジニアリング組織に再配置されたという。
導入の告知方法についても問題視されている。訴状によれば、監視プログラムは上級リーダーではなく一エンジニアが二次的なグループに投稿する形で告知され、同意確認のクリックスルーもなく、一部のチームでは通知すら届かず、当初はオプトアウトの手段も提供されなかった。
Meta広報担当者は「これらの主張は事実に基づいておらず、人員管理や組織の意思決定はAIではなく人間が行っている」と反論している。
法的手続きの面では、Metaが従業員に相互仲裁合意とクラスアクション(多数の原告が共通の利害に基づき一括して提起する集団訴訟。Meta社の仲裁合意はこの権利を放棄させる条項を含む)放棄条項への署名を求めていることから、原告は個別の仲裁で請求を追求する方針をとりつつ、裁判所には解雇差し止めの仮処分を求めている。請求根拠には各州の保護休暇法のほか、連邦法であるFMLA(家族・医療休暇法)、妊娠差別禁止法、障害を持つアメリカ人法(ADA)が含まれる。担当判事はオバマ大統領が任命したウィリアム・オリック連邦地裁判事である。
本訴訟の核心は、AIシステムが人事評価に介在する場合に「人間の意思決定」と言えるのかという論点にある。Metaは4月に約8,000人の削減計画を公表した際、「AIファースト企業」への転換を掲げ、数千人を新たなAI部門に再配置すると発表していた。AIの開発・推進を企業戦略の中核としながら、その同じAI技術を人員削減の選別にも活用していたという構図は、企業のAI活用方針と従業員保護のバランスに関する議論を先鋭化させる可能性がある。
米国では雇用判断へのAI利用を規制する動きが州レベルで広がりつつあるが、連邦レベルの包括的な規制は未整備である。本件が連邦裁判所でどのような判断を受けるかは、AIを用いた人事決定に対する法的な基準を形成する先行事例となりうる。