AI関連の最新ニュースをピックアップ
フランスの有力AIスタートアップMistral AI(ミストラル・エーアイ)は、工場や倉庫、オフィスでの自律移動(フィジカルAI)向けに設計された、初のロボティクスナビゲーション専用の80億パラメータ規模のVLAモデル(Vision-Language-Actionモデル:画像とテキストを認識してロボットの行動指令を出力するAI)「Robostral Navigate」を発表した。高価なLiDAR(レーザー光による距離測定装置)や複数の深度センサーに頼らず、単一のRGBカメラ(標準的なカラーカメラ)と自然言語コマンドのみで機能する。
Robostral Navigateは、未知の環境でロボットが指示に従って移動する業界標準のベンチマーク(性能評価用の比較テスト基準)「R2R-CE」において、学習データに含まれない未知の環境下で76.6%の成功率(検証済みの既知環境では79.4%)を達成した。これは従来の単一カメラモデルを9.7ポイント上回り、深度センサーや複数カメラを用いた既存の最高性能モデルをも4.5ポイント凌駕する。センサー構成を単純化できるため、ロボット群の導入コストを大幅に抑制可能だ。
本モデルは、画像内の指示された位置と目標方向を予測する「pointing(画像内の座標を指定する移動指令)」を基本動作とする。指示された場所がカメラの視野に入っていない場合は、自動的に「前方に2メートル、左に1.5メートル進む」といったロボットの局所座標系に基づく変位コマンドに切り替わる設計になっており、環境変化やカメラ性能の違いに対して高い堅牢性を備えている。
モデルの学習は、仮想空間内のシミュレーション環境で約6,000のシーンから得られた約40万パターンの軌跡データを使用して行われた。episode(一連の移動プロセス)全体を単一シーケンスに圧縮して並列学習させる「prefix-caching(接頭辞キャッシュ)」技術により、学習に必要なトークン数を22倍削減し、通常は数ヶ月かかるトレーニング期間を数日に短縮した。また、教師あり学習の後にCISPOと呼ばれるオンライン強化学習アルゴリズムを用いて学習させ、試行錯誤を通じて障害回避やリカバリ能力を向上させ、成功率をさらに3.2%向上させた。
Mistral AIは、言葉による単純な命令で動作する自律的な移動能力が、ロボットによる複雑な作業を実行するための基盤になると位置づけている。車輪型、多脚型、飛行型などの形状を問わず適用可能で、高価なセンサー類を必要としない「Robostral Navigate」は、産業用オートメーションや配送サービスといった実ビジネスでのAI活用への敷居を下げる重要な一歩となりそうだ。