AI関連の最新ニュースをピックアップ

Googleの慈善活動部門であるGoogle.orgは、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の「Societal Computing and Innovation Lab」(SCIL:社会計算科学・イノベーション研究所)に対し、AI(人工知能)を活用した森林火災対策プラットフォーム「Wildfire Science and Technology Commons」の開発を加速するための資金提供を発表した。この支援により、現実の森林を仮想空間に再現する「デジタルツイン」を用いた防災シミュレーションの構築が進められる。
デジタルツイン(現実の物体や環境を、センサーデータなどを用いて仮想空間上にリアルタイムに再現する技術)は、実害をもたらすことなく様々な消火・避難シナリオのシミュレーションを可能にする。SCILでは、森林の植生や地表の燃料(落ち葉など)の状態を360度方向から計測する「LiDAR」(レーザー光を照射して対象物までの距離や形状を測定する技術)スキャンを繋ぎ合わせることで、実在する森林の3D点群モデルを構築している。これにより、これまで実際の火災時でしか検証できなかった消火戦略やリスク低減対策を、管理された仮想環境下で安全に評価・探索できるようになる。

現在、森林火災に関するデータや予測モデルは各研究機関に分散して存在しており、AIの活用における大きなボトルネック(全体の効率低下の原因となる要素)となっている。Google.orgはSCILのプラットフォームを通じて「データの共通のデジタルホーム」を構築し、現場の消防士や土地管理者に最先端の研究成果を届けることを目指す。Google本社で開催されたワークショップを経て合意された最優先事項として、「燃料・地形・気象という火災環境の構成要素を接続すること」「消防コミュニティに開かれていること」「既存のシステムを再利用し規模を拡大すること」が挙げられ、これらを基に「フェデレーテッド」(分散した複数の組織がデータを互いに連携して利用する方式)オープンフレームワークと再利用可能なテンプレート開発を進める。

Google.orgとSCILの連携は、科学研究を現場の防災オペレーションへ橋渡しする実用的な一歩である。デジタルツイン技術により、現実と同期した高精度なシミュレーションが可能になることで、地域コミュニティの火災に対する回復力(レジリエンス)が飛躍的に高まり、迅速かつ効果的な初期消火や避難誘導の実現が期待される。
引用元:Jarrett Haley