AI関連の最新ニュースをピックアップ

米国の急成長AIラボであるArcee AIは、Hugging Faceと数百万ドル規模の戦略的商業提携を発表しました。これにより、公開モデルやデータセットだけでなく、企業向けビジネスで利用する非公開モデルやプロプライエタリ(独占的)なデータ、エージェントの実行履歴を含むすべてのAI資産をHugging Faceのインフラ上で管理することになります。従来のAWS S3(Amazonが提供するクラウドストレージサービス)から、Hugging Faceの新しいプライベートストレージ製品である「Buckets」へと完全に移行を決定した初めての主要な米国AIラボとなりました。
Arcee AIは、Hugging Faceのプライベートストレージサービスである「Buckets」の開発にローンチパートナーとして協力してきました。「Buckets」は、AI関連の巨大なデータ(モデルのパラメータの重みやデータセット)に最適化されたテラバイト単位のストレージサービスで、Egress料金(クラウドから外部にデータを取り出す際の転送手数料)やCDN(コンテンツ配信網)利用料が含まれています。 このサービスを利用することで、Arcee AIは特定のクラウドサービスに囲い込まれる(ロックインされる)ことなく、最も安価な計算資源(GPU)を提供するプロバイダーで柔軟にトレーニングや推論環境を切り替えて構築できるようになります。

Arcee AIは、Hugging Face Hub上で非常に活発に活動している組織の一つであり、これまでに204件のモデルと63件のデータセットを公開しています。代表的な成果物には、独自の「Trinity」モデルシリーズ(Trinity-Mini, Trinity-Nano, Trinity-Large-Thinking)や、ベースモデル単体で16万回以上ダウンロードされた「AFM-4.5B」基盤モデルがあります。 また、他の研究機関が学習に用いるオープンデータセット「The-Tome」や、知識蒸留(巨大モデルの知識を小さなモデルに継承して効率化する手法)モデル「INTELLECT-1」の学習に貢献した「Llama-405B-Logits」なども公開しています。

今回の提携は、Hugging Faceが単なるオープンソースの共有コミュニティから、企業の機密データを預かる実用的な「AIインフラプラットフォーム」へと進化していることを示しています。また、AI開発企業にとっては、高価なデータ転送手数料を回避しつつ複数のクラウドプロバイダーを機動的に切り替えるという、マルチクラウド戦略(複数の異なるクラウドサービスを併用するアプローチ)の有効な先行事例となると見られます。