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米Microsoftは現地時間2026年6月2日、開発者会議「Build 2026」において、AIコーディング支援機能「GitHub Copilot」の大幅なアップデートを発表しました。最も大きな変更点として、これまで標準モデルとして採用されていた米OpenAIの「GPT-4 Turbo」に代わり、自社開発した新しいAIコーディングモデル「Project Polaris」を2026年8月からデフォルトエンジンとして自動的に導入します。これにより、同ツールにおけるOpenAIへの依存度が下がり、自社サービスとの垂直統合を推進する動きと見られます。また、統合開発環境であるVS Code(Visual Studio Code)におけるマルチエージェント拡張機能の導入や、自律的なソフトウェア開発を行える「GitHub Copilot Workspace」の一般提供開始もあわせて発表されました。
新モデルのProject Polarisは、特定の開発言語や用途に合わせて調整された複数の専門モジュールを組み合わせる「Mixture-of-Experts(MoE:混合専門家)」アーキテクチャを採用しています。Microsoftによると、AIのコーディング性能を測定するための標準的なベンチマーク(テスト指標)である「HumanEval」や「MBPP」において、従来のGPT-4 Turboを上回る性能を示したとしています。特にRustやHaskellといった、学習用データが比較的少ない言語で性能向上が顕著であると主張されています。 このモデルは、Microsoftのクラウドサービス「Azure」上の独自設計されたAIアクセラレーター(AI処理を高速化する専用チップ)である「Maia」で動作し、応答速度の向上と運用コストの低減を実現します。なお、2026年8月の移行に備えて、自動移行を3か月間遅らせて旧モデルに切り戻すフォールバックオプションも提供されます。
VS Codeにおける新しいアップデートとして、並行して処理を行う「マルチエージェント拡張機能」の導入が始まりました。これにより、単一の指示に対応するだけではなく、全体の調整を行う「オーケストレーター」が、コード検証やテスト生成、セキュリティ検証などの個別のタスクごとに専門の「サブエージェント」を同時に起動して処理を分散実行できるようになります。開発者はメインの開発画面を切り替えることなく、リアルタイムに進捗を監視し、指示を修正することが可能です。
リポジトリ(プログラム群の保管場所)全体をAIが認識し、自律的に複数ファイルの書き換えやテストを試行錯誤する「GitHub Copilot Workspace」の一般提供が開始されました。これには、人間による指示確認なしに自律動作する「フリートモード」や、バックグラウンドでのスケジュール実行が可能な「オートパイロットモード」が含まれています。 一方で、自律動作エージェントの普及に伴うセキュリティの懸念も指摘されています。研究者らによると、プロンプトインジェクション(悪意ある指示によるAIの不正操作)や、コメント欄に隠されたコードを介して機密情報であるAPIキー(外部連携用の認証鍵)が漏洩する「Comment-and-Control」攻撃の脆弱性が実証されています。そのため、組織的な導入にあたっては権限範囲の監査が推奨されています。
今回の移行劇は、2026年4月にMicrosoftとOpenAIの独占的パートナーシップが終了して以来の大きな方針転換となります。MicrosoftがAIモデル自体の性能においても競合と直接対決する姿勢を強めているとの見方があります。 開発現場にとっては、並行エージェントによる自動コード検証やWorkspaceの一般提供によって開発効率が飛躍的に高まる期待がある一方、8月のPolarisへのデフォルト移行に向けて、個別の開発ワークフローが新モデルで正しく動作するか事前に検証する必要があります。また、自律エージェントの権限範囲が広がるため、企業ユーザーはデータのプライバシーポリシーの確認やセキュリティ監査をこれまで以上に徹底することが求められるでしょう。