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米半導体大手クアルコム(Qualcomm)のCEOであるクリスティアーノ・アモン氏は、2026年6月1日に台湾で開催された「COMPUTEX TAIPEI 2026」の基調講演に登壇しました。アモン氏は、AIが次の進化ステージである「エージェンティックAI(自律的に判断して行動できるAI)」に入ったとし、「2026年はエージェントの年(Year of Agents)」になると宣言。これまでのスマートフォンを中心としたデジタルエコシステム(複数のサービスや機器が連携する仕組み)から、AIエージェント自身がユーザー体験の中心となる未来像を提示しました。
AIエージェントが24時間体制で自律的にタスクを処理するようになると、通信量や計算資源の単位である「トークン(AIが言語などを処理する際の最小単位)」の需要が世界規模で爆発的に増加します。クアルコムの予測によると、2026年現在の世界のトークン需要(10秒あたり約317億トークン)は、2030年には約40倍の1.27兆トークンに達する見通しです。 この莫大な処理コストと電力消費に対処するため、アモン氏はデバイス側(エッジ)とクラウドを最適に組み合わせる「分散型AI(Distributed AI)」を提唱しました。すべてをクラウドで処理する場合と比べ、端末側の処理を組み合わせることで、コストを4分の1に圧縮できる実証データを示しています。
同氏はまた、現実世界と相互作用する「フィジカルAI(ロボットや自動運転車などの物理的なAIシステム)」として、自動車やロボティクスへの適用例を挙げました。ここで重要な役割を果たすのが次世代通信規格の「6G」です。6Gの「センシング(無線信号から周囲の状況を検知する機能)」技術を活用することで、都市全体の「デジタルツイン(現実空間の情報を仮想空間に再現する技術)」をリアルタイムで構築し、自律エージェントの行動に必要な文脈情報をインフラ側から提供できるという構想を語りました。
さらに、データセンター向けの新製品ブランド「Dragonfly(ドラゴンフライ)」を発表しました。これにより、ウェアラブル機器から高性能データセンターまで、あらゆる計算層をカバーする製品群が揃ったことをアピールし、強みである省電力性を武器に今後のAI市場での主導権を握る構えを見せています。
クアルコムが示したビジョンは、AIエージェントの普及が単なるソフトウェアの進化にとどまらず、ハードウェアや通信インフラの構造変化を引き起こすことを物語っています。特に、クラウド側の処理能力や電力の限界を見据え、同社の強みであるエッジコンピューティングや通信技術(6G)を融合させた「分散型AI」の重要性を主張した点は説得力があります。データセンター向け新ブランド「Dragonfly」の立ち上げを含め、クアルコムはエッジからクラウドまでの全領域で存在感を高めていくと見られます。ただし、6Gの標準化やデジタルツインの構築にはインフラ整備のコストやプライバシー面での課題も残されており、今後の実用化に向けた業界全体の連携が鍵となりそうです(編集部注)。